大手投資銀行、大手米系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドで働いた投資家、ムーギー・キム氏は、そういったイメージは間違いで、「聞くのがうまい人」こそが一流のコンサルタントだと言います。キム氏の上司もそう語っていたそうです。
1.コンサルタントは、年齢も役職も職種も異なるクライアントから、ありとあらゆる話を聞き出さなければならない。
2.そもそも、相手の問題を知らないのに解決策を提案できるはずがない。
3.相手のニーズも知らないのに独りよがりの提案をしたところで、お客さんに受け入れてもらえるわけがない。
以上の理由から、「聞く力」こそがプロジェクトの出発点になると説明しています。
しかしこれは、コンサルタントに限ったことではありませんよね。営業職だって同じで、お客さんが何を困っているのか、何を求めているのかを理解して、初めて商品提案ができるはず。
取材記者(編集者、ライター)という仕事にとって、この「聞く力」が必要だということは、当人だけでなくこの仕事に縁遠い方にとっても容易に想像できると思います。でも、「聞く力」が、実はなかなか難しい技術だということは、意外と想像できないかもしれません。
ボクは仕事柄、この「聞く力」が不足している原稿をたくさん読みました。書くことでメシを喰ってる一応のプロの中にも、「書く力を鍛えればいい記事を書ける」と勘違いしている人がいるのかもしれません。「書く力」の不足は、編集者なり編集長が後から修正することで補うことができるんです。けど、「聞く力」が不足している原稿は、あとで修正してもできは良くならないんですよね(笑)。
先のキム氏は、コンサルティングの仕事において「聞く」ことは、"相当骨の折れる作業"と言います。
"コンサルできちんと顧客の話を「聞く」には、業界に対する高度な専門知識や問題に対する知見、問題点のパターン認識が必要になる。それらがないと、適切なレベルで顧客に質問することさえできないのだ。"
これは編集者やライターにも言えることです。取材相手が時間に余裕があって、ものすごく丁寧に体系立てて説明してくれるなんて好条件は稀です。限られた時間の中で、知りたいこと、有益なことを聞き出すには、やはり知の基礎体力みたいなものが必要。そんなふうに思います。
〔参考〕『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』(著=ムーギー・キム)