2018年12月19日水曜日

日本にカジノができたら遊びに行く人はどのくらいいる?

興味深い記事です。

" 国内にカジノができたら遊びに行くか――そんな問いに対して、半数以上が「遊びに行かない」と回答。一方で「カジノに遊びに行く」と回答した人は14.7%のみという結果 "(元記事から抜粋)

記事を書いたDANRO編集部は「半数以上が行かない」ということを強調したかったのだと思いますが、ギャンブル系アミューズメントやカジノを取材フィールドにしている当方にとって、この「14.7%」というのは、結構大勢いるもんだな!という数字です。

日本のギャンブル系大衆娯楽の王様である「宝くじ」ですが、過去12カ月の間に、宝くじ売場やコンビニなどの店頭で買ったことがある人(参加者)は約22%です。全国津々浦々にあるパチンコ・パチスロの参加者率は10%程度に過ぎません。

さらに、
" 「海外旅行先のカジノで遊んだ経験はありますか?」という質問の回答に対しては、「遊んだことがある」が62.7% "(元記事から抜粋)
という記述にも、そんなに大勢の人がカジノで遊んだ経験あるのか!と驚きました。



しかし、冷静に考えると、アンケートの回答者は総合旅行サイトの会員です。アクティブかつ消費意欲が高め(旅行はかなりお金がかかるレジャーです)な人々へのアンケートである点に注意が必要です。

そして、62.7%というカジノ経験者率は、あくまでも「生涯で」の経験を問うたもの。アンケート対象は10代~70代ですので、「大昔、新婚旅行で済州島にいって、ホテルの中のカジノでちょっと遊んだ」なんて方も含まれています。

当方も一昨年、4000人規模の全国調査(ちゃんと人口動態に比例するようサンプル割り付けをした)を行って、「日本国内のあなたの生活圏から2時間圏内に合法的なカジノができたら」と参加意向を調べましたが、全体平均では、参加意向者率はもっと低かったです。

つまり、旅行好きの人は、国内にカジノができたとき遊びに行く可能性が高い(トライアルであれ何であれ)ということかもしれません。消費力が高めでしょうし、旅という非日常をレジャーに求めるという<志向>も関係しているのではないかと思います。

元記事は下記
■「日本にカジノできても行かない」が半数以上 旅行サイトのアンケート
https://www.danro.bar/article/12019551?fbclid=IwAR3zOPZEt4-njkeCjAgJReZ4cneG_wE4d-A3rVp8Uqy9G36_GDfEtGejFac

2018年12月17日月曜日

遊技機1台当たり売上 2カ月連続減少

サービス産業の売上高等の経営動向を把握するために、経済産業省が毎月実施している「特定サービス産業動態統計調査」によると、10月度のパチンコホールの遊技機1台当たりの売上高は42万7433円で、1日当たりに換算すると1万4千円前後。月当たり台売上は9月より1万4574円減少、前年同月より8445円減少だった。

調査対象企業の10月度の総事業所数は1247店舗で、前月より1店舗減少。平均設置台数は531台で前月より3店舗増加。1店舗当たり売上高は2億2690万円で前月より670万円減少。

同調査は、特定のサービス業に属する事業を営む企業(又は事業所)のうち当該業種の全国(又は特定の地域)の年間売上高の概ね7割程度をカバーする売上高上位の企業(又は事業所)を調査対象にしているが、パチンコホール事業については、全国店舗の13%程度をカバーしている。


日本企業からも参加 マカオ大学「統合型リゾート経営管理学 短期訓練課程 #6」

マカオ大学工商管理学院は、IR産業関連企業の上級幹部を目指すビジネスパーソン向けの短期集中講座「グローバルリーダーシップ育成プログラム~国際統合型リゾート経営管理学(GLDP)」の第6回目を11月30日~12月3日にマカオで開催しました。
これに参加してきたわけです。
GLDPとは何か?ということについてはこちらの記事で説明しています。

ざっくりとした印象というと、長崎開催のModule5では「IRとは何か?」という説明から始めたのに対して、「レジャー産業への経済学の応用」で始まった今回のModule6(マカオ開催)は普段の大学・大学院の講義に近いのではないかと感じた。


「レジャー産業への経済学の応用」を講義したRicardo Siu教授

リカルド・シウ教授の講義では、余暇需要の決定要因を考える中で、「お金」と「時間」が重要だとして、「需要の価格弾力性」と「時間の貧困」について説明した上で、高給消費者にとっての「統合されたリゾート」というコンセプトの魅力を論じました。

4日間、30時間というプログラムの中では、座学だけでなく、グループディスカッション(そして深夜にホテルの部屋で資料探しやスライド作成)、IR関連施設の視察もありました。個人的には、ウィン・パレスのバックオフィス・ツアーが刺激的でした。事前に大学にリクエストしていたものをほぼ見せていただいたので。これについては機会があればまた後日書きます。


7つのグループに分かれた参加者は講義の合間に
議論を重ね、最終日のグループ発表に臨んだ

日本からの参加者にとって特に有益だったのは、マカオのレスポンシブル・ゲーミング公共政策についてのレクチャーだったかもしれません。

日本でIRの導入にあたり議論が活発化したのがギャンブル依存問題ですが、今回の教授陣のひとりデイビス・フォン教授はマカオ政府に協力し、この問題に10年以上取り組んできた専門家です。


レスポンシブル・ゲーミングなどマカオの
公共政策を説明したDavis Fong教授


公共政策としてのギャンブル依存対策

マカオではカジノ事業の1社独占体制が終わり、2004年5月、新たにライセンスを得た事業者のカジノ第1号「サンズ・マカオ」が開業しました。建設途中の開業半年の時点で投資を回収してしまったといわれる、すさまじい収益をたたき出しました。
これがマカオのカジノ産業の爆発的な拡大の始まりですが、同時にマカオ居住者のギャンブリング障害者数も増加することになりました。

しかし政府はこれに先立つ03年、マカオ大学内に「カジノ研究所」を設立し、初の全国調査である「マカオ住民のカジノ参加状況調査」を委託するなど本格的な実態調査を開始していました。
政府の委託を受けたデイビス・フォン教授らは、07年にレスポンシブル・ゲーミングの「指導原則」を提出。翌08年に政府は「責任あるギャンブリング政策」の推進を宣言、09年に政府社会工作局、博彩監察協調局、マカオ大学カジノ研究所が「責任あるギャンブリング推進」活動計画を発表しました。

04年から13年の間に相次いでカジノ施設が開業し、07年にはコタイ地区に「ベネシアン・マカオ」が開業しています。この9年間にマカオカジノ産業の市場規模は約9倍になりました。
しかし、産・官・学の連携によるレスポンシブル・ゲーミング政策の推進により、13年にはギャンブリング障害が疑われる成人の割合は、03年の水準を下回るほどに低下しています。



アメリカ精神医学会によるDSM4基準で「Pathological Gambling」(病理学的賭博=持続的で反復的な不適応的賭博行為。10項目中5項目以上に該当)の割合は、03年調査では1・8%、07年調査では2・6%、10年調査では2・8%、13年調査では0・9%と推移しています。
DSMの改訂版であるDSM5基準で集計された16年調査では、「深刻なギャンブル障害」の割合は0・5%、これより軽い「中程度のギャンブル障害」の割合は0・8%になっている。

日本は、マカオの産官学連携によるレスポンシブル・ゲーミング政策を、良い先例として大いに研究する必要があるはずです。 



田中 剛・Editor
Report by Tsuyoshi Tanaka

[KEY]UNIVERSITY OF MACAU Global Leadership Development Program – Module 6