2014年12月30日火曜日

「聞く力」の重要性と難しさ

コンサルタントという仕事をしている人に対しては、「話がうまい」というイメージを抱いている人が多いと思います。また、もしかしたら若手コンサルタントご本人の中にも、「話がうまくなければ」とか「難しいこと喋ったもん勝ち」みたいに思っている方がいるかもしれませんね。

大手投資銀行、大手米系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドで働いた投資家、ムーギー・キム氏は、そういったイメージは間違いで、「聞くのがうまい人」こそが一流のコンサルタントだと言います。キム氏の上司もそう語っていたそうです。


1.コンサルタントは、年齢も役職も職種も異なるクライアントから、ありとあらゆる話を聞き出さなければならない。
2.そもそも、相手の問題を知らないのに解決策を提案できるはずがない。
3.相手のニーズも知らないのに独りよがりの提案をしたところで、お客さんに受け入れてもらえるわけがない。


以上の理由から、「聞く力」こそがプロジェクトの出発点になると説明しています。


しかしこれは、コンサルタントに限ったことではありませんよね。営業職だって同じで、お客さんが何を困っているのか、何を求めているのかを理解して、初めて商品提案ができるはず。

取材記者(編集者、ライター)という仕事にとって、この「聞く力」が必要だということは、当人だけでなくこの仕事に縁遠い方にとっても容易に想像できると思います。でも、「聞く力」が、実はなかなか難しい技術だということは、意外と想像できないかもしれません。

ボクは仕事柄、この「聞く力」が不足している原稿をたくさん読みました。書くことでメシを喰ってる一応のプロの中にも、「書く力を鍛えればいい記事を書ける」と勘違いしている人がいるのかもしれません。「書く力」の不足は、編集者なり編集長が後から修正することで補うことができるんです。けど、「聞く力」が不足している原稿は、あとで修正してもできは良くならないんですよね(笑)。


先のキム氏は、コンサルティングの仕事において「聞く」ことは、"相当骨の折れる作業"と言います。

"コンサルできちんと顧客の話を「聞く」には、業界に対する高度な専門知識や問題に対する知見、問題点のパターン認識が必要になる。それらがないと、適切なレベルで顧客に質問することさえできないのだ。"

これは編集者やライターにも言えることです。取材相手が時間に余裕があって、ものすごく丁寧に体系立てて説明してくれるなんて好条件は稀です。限られた時間の中で、知りたいこと、有益なことを聞き出すには、やはり知の基礎体力みたいなものが必要。そんなふうに思います。



〔参考〕『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』(著=ムーギー・キム)

2014年11月28日金曜日

子どもの話を「聴く」

ちょっと前の話。

出勤前に洗面所の鏡に向かいネクタイを締めようとしていたとき、浮かない顔をしたムスメ(7歳)が入ってきて、「あたし、学校行きたくない」と言い出しました。
これは、いま感情に問題を抱えてます、というわかりやすいサインですね。

気持ちにも時間にも余裕があったので、かなり意識的に「聴くよ!」と決めました。


ムスメ: あたし、みんなに嫌われてる。

じぶん: そうなの?
※「バカ言ってんじゃねー!」とか、「どうして?」は我慢

ムスメ: 誰もあたしと一緒に帰って(下校)くれない。

じぶん: ふーん。(続けてごらん)

ムスメ: 昨日ね、Y(仲良しのクラスメイト)が一緒に帰ってくれなかったんだ。

じぶん: Yちゃんと一緒に帰りたかったけど、Yちゃんとは一緒に帰れなかったんだね。
※「Yちゃん=皆だと捉えてるんだね」という分析・診断は我慢

ムスメ: Yと一緒に帰ろうって約束してたんだよ! でも、Yはほかの子と帰った。
※「ほかの子と一緒に帰ればいいじゃん」という提言も我慢

じぶん: それで、すごくイヤな気分だったんだね。

ムスメ: Yと一緒に帰れないんじゃ、学校なんか意味ないじゃん!(怒)

じぶん: そうかー。...(沈黙)


しばし、ムスメが話を続けるのを待ちましたが話はそこで終わり。
「おや、もう終わり?」と少し拍子抜けした気分。

ムスメの関心は、ボクの首に掛けたままのネクタイに移りました(ネクタイは珍しいので)。太い側の端からクルクルとロール状に丸めて、パッと手を離し、またクルクルと丸めて。

いつの間にかニヤニヤしています。

そこで居間からカミさんの声。
「体操着は持ったー?」

ムスメは「持ったよー」と返事して、「じゃあね〜」と洗面所を出て行きました。ちょっとは気分が晴れたみたい。

気を取り直したまま、登校してくれたみたいです。

2014年11月7日金曜日

退職決断のための「黄金基準」

おー、シンプルでいいねー!と思いました(↓)。
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20111216
「自分の価値観と同じだ」と思った人はこれを判断基準にすればいい。

けど、気を付けなきゃいけないのは、これは、ちきりんさん自身にとって優先度が高いことによる判断、ちきりんさんの価値観だということ。
たとえばキャリアについて相談された方(上司やキャリアカウンセラーのような方)が、相談相手が何にプライオリティを置いているかといった価値観を知る前に、「これがベストな判断方法」と提示するべきでないと思いますね。

2014年11月4日火曜日

成功にたどり着く人と諦める人の違い

試行>実行・出来事>フィードバック>チエック>調整>成功

数日前に何かのニュース動画を見終えたところ、その他の動画コンテンツリストにちょっと気になるものがあった。大学生向けの講義のようで、「奇跡のなんとか講義」というタイトルだった。
講師の名前も、どこの大学での何の講義かもわからないが、「成功するためのプロセス」についての講義だった。もしかしたら、キャリア教育の授業なのかもしれない。

その講師が学生に伝えようとしていた「成功するためのプロセス」が、上に書いた、

  • 試行(Tryal)
  • 実行・出来事(Event)
  • フィードバック(Feedback)
  • チェック(Check)
  • 成功(Success )

からなるサイクル。

へー、と思いながらメモしたのが添付の図。

なるほど、と思ったのは、成功にたどり着く人と諦める人の違いは、フィードバックの<受け止め方>にあるという説明。

うまくいかなかった場合に、そのフィードバックをマイナスに解釈してしまうとマイナスの感情が湧き、やる気がなくなってまう。
マイナスの解釈をしてしまうのは、思考のクセが原因。心理学の言葉でいえば「信念」に原因がある。
一方、成功に近づく人はフィードバックを事実として受け取る。客観的に、冷静に、一歩引いて受け取る。「ふーん、こうすると失敗するのだな」と考える。そして、調整し直して再び試みる。


後日。通勤時の読書のためにどの本を持って行こうかと考え、ずっと手をつけずに放ったらかしにしていた本(買ったもののあまり関心が湧かなかった)を選んでみた。
通勤電車の中で目次を眺めると、なんと、まるまる一章を割いて、先日の講師が語っていたプロセスのことが書かれているではないか!
これは、トニー・ブザンが提唱したようだ。

2014年11月3日月曜日

仕事の全体像を把握しやすいToDoリスト

ときどき部下に「ToDoリストを作れよ。そうすれば仕事のモレがなくなるぞ」と助言します。けど、ToDoリストを作ることじたいを習慣にできない、リストを作るには作るけどモレが多い(結局、やり忘れる)という人もいるんですよね...。

部下の一人は彼なりにToDoリストを作っていたのですが、それには深刻な漏れ・抜けがあるのと、作業レベルにブレイクダウンされてないという問題がありました。

ですから、「漏れを防ぐために日頃からメモをせよ」「やるべきことを細かな作業にブレイクダウンせよ」と助言しました。

ブレイクダウンされてない(具体的な作業に分解されてない)ということは、実は、何から手を付ければいいか、本人自身の中で明確化されてないんですね。だから、いつまでも手を付けられないまま時間が過ぎていく。

分解した作業をリスト化すればよいのですが、どうやら、ブレイクダウンするのが苦手、リスト化することが苦手という人がいるようです。そもそも、やるべき順にきれいにリストアップするには、同種の仕事の経験量が必要ですし。最近では、「やるべきことを順番にリストアップすることが苦手ということは、鍛えようがないことなんじゃないか?」と思ってます。

だったら、思いついた順に書き出せばいい。人から「あれも忘れるなよ」と言われたことを、そのつどToDoリストに書き加えればいい。
でも、順不同で脈絡なく縦一列に並んだToDoリストには、ちょっとした問題がありますね。
「まずどれをやるか?」「次に何をやるか?」を決めにくいし、仕事の全体像が見えにくいですよね?


先日、「とりあえず、こういう形のToDoリストを作ってみなよ」と、ボクが考案したToDoリスト・チャートを伝授しました。

(1)まずスタート地点である「今」とゴールである「完成」を丸で囲み、その間を10センチとか20センチの線で結ぶ。

(2)その線に斜めに合流する線を引き、仕事を大雑把に分解した「Sub仕事」を書き込む。

(3)さらに、それら「Sub仕事」の前後にある「やるべきこと」を書き込む。という具合に、連想ゲーム的に「やるべきこと」を、順番も考えながら書き加えていく。

これだと、途中で指示されたこと、思い出したこと、思いついたことを挿入しやすい。それに、縦一列に並んだToDoリストより、仕事の全体部が見えると思いません?

いかがです?

名付けて「フィッシュボーン・ToDoチャート」。

頭の中で仕事の全体図が描けてる人は、ばーっつとタスクだけを書き出していって、やるべき順番を入れ替えていけばいいんでしょうが、そういう脳の使い方が苦手という人がいるようです。

リスト形式が苦手な方は、試してみてはいかがでしょう?

2014年11月1日土曜日

人が伸びなきゃ会社は伸びない

昨日は株式会社風土の小山政彦代表(元・船井総研会長)を訪問し2015年の時流予測をレクチャーしていただきました。

話はいろんなことに及びましたが、特に印象的だったのは、「会社は若手の中間管理職を育てなければダメだ!」と人材育成の重要性について熱く語っていたことです。

「社長が何でも自分でやろうとしている、社長が何でも自分でできると思い込んでいる、自分のところの社員を『こいつらにはできない』と言っている、これが伸びない中小企業の典型だ」

人を活かすことができる会社が伸びるのですね。

2014年9月12日金曜日

「遊び」は人間の基本的欲求だと思うんだけど...。

マズローは人間の欲求には5つの階層があると唱えました。いわゆる「欲求5段階説」です。
低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するというもの。

その欲求とは低い階層から順に次の通り。

1.生理的欲求
2.安全の欲求
3.社会的欲求(所属と愛の欲求)
4.尊厳の欲求(他者からの承認)
5.自己実現欲求

なるほど、と思います。

※マズローは何も、低次の欲求が完全に満たされてから次の階層の欲求を欲するようになると言ったわけではないし、提示した階層(順番)は人間誰しもが同じだと言ったわけでもない。

ちなみにマズローは晩年、6番目(最も高次)の欲求として「コミュニティ(共同体)発展欲求」を追加しています。



しかし...、「遊び」 は基本的な欲求じゃないのだろうか? 

そんなことを常々思ってました。
もう少し丁寧に説明すると、マズローの5つの欲求では、社会学者カイヨワによる「遊び」の分類の半分しか説明できないように思うのです。※カイヨワは遊びを、<競争><模倣><偶然><眩暈>の4つに分類しました。

ところが、ひょんなことから「もしかしたら、これか?」と思う説を知りました。

人が誰しも持つニーズは6つある(6 Human Needs)というもので、以下の通り。ボクは最初、マズローの欲求5段階説によく似ていると思いましたが、「変化・多様性」を人の持つ基本的なニーズと捉えている点を決定的な違いだと思いました。

1.確実感・安定感
2.変化・多様性(驚きや状態の不確実性を求める)
3.自己重要感
4.愛・つながり
5.成長・発展
6.貢献

この、「変化・多様性」のニーズを満たす行為が、「遊び」なんじゃないかと思うのです。



競争の遊びは、「自己重要感」や「成長・発展」。
模倣の遊び(ごっこ、演劇など)は、「愛・つながり」かな?
偶然の遊び(ギャンブルなど)は、「変化・多様性」にあてはまるんじゃないだろうか?
眩暈の遊び(ブランコやジェットコースターなど)も、「変化・多様性」にあてはまるんじゃないだろうか?

と、思った次第です。


余談ではありますが、「自己重要感」を「愛・つながり」(≒マズローの社会的欲求)より先(低次)に挙げている点も、個人的には納得感高いです。「人は他者から承認されないと生きていけない生き物」という言葉をどこかで読んだ記憶があり、印象深く残っています。

というわけで、この「6HN」は、自分にとってとても納得感が高いです。

2014年8月5日火曜日

学習時間の記録 ~統計検定編

統計検定3級を受けたときの学習時間の記録です。
学習に費やした時間は49日間で26時間57分、1日平均33分(やってない日も含めて)。

基本的には往復の通勤時間(たっぷりありますので)を使っています。
最初の1カ月でテキストを通読。ちょっと休んで、あいまいだった箇所を中心に復習。
グラフ化してみると、歯の抜けたクシみたいだし、山なりになっているので、「毎日コツコツ」という感じではありませんね。明るいオレンジ色の折れ線グラフが「3日間の移動平均」ですが、けっこう上下してるように思います。

しかし、最初の28日間で、2日続けてサボったのは、2日目と3日目の1回だけ。「毎日」にこだわらなくても、いいのかもしれませんね。ただし、1日サボると平均学習時間はガクンと下がりますが。

2回くらい、読んでる箇所がどうしても理解できなくて、もやもやして気持ち悪いので、帰宅途中のマクドナルドで深夜までテキストと格闘しました。それ以外は、あまり根を詰めずに、無理のない範囲でやるようにしてました。趣味みたいなもんだし、「だいたい分かってることの整理」で始めたことですから。

偶然かもしれませんが、初日の学習時間が約42分。28日間の平均もちょうど42分でした。

結果は、一応は合格ですが(正答率は8割)、密かに「成績優秀者入り」を狙っていたので、それを逃したのは残念です。

2014年7月25日金曜日

書き始める前に考え(構成)を整理するツール

久しぶりにアプリのネタを。考えを整理するのに役立つアプリです。

ボクは、編集部のメンバーには、「まず文章の骨格を作りましょう」、「書き始める前に設計図を作りましょう」と助言しています。

家を作るときに、設計図なしにいきなり工事を始めたりしないのと同じです。

文章の設計図、章だてがあれば、「いまから、こういう主張の記事を、こういう構造で作ろうと思います」ということを事前に共有できます。すると、その時点で「OK」とか、「それはよくないよ」「あの要素が抜けているよ」と助言できます。

冒頭からこつこつ書き始めて30%の文字量を書き終えた状態と、仮に作った見出しだけを書きだした状態(本文はほとんど書いていない)では、後者のほうがゴールに近づいています。 

冒頭から30%書き進んだ原稿を見せられても、その先のことはわかりません。でも、見出しだけを書きだしたアウトラインの状態は、全体像を把握することができます。ですから、書きあがってから、大々的なやり直しはまず起こりません。

文章の設計図を作るまでがすごく大変な仕事で、
「この要素を盛り込みたいけど、ここに入れると、流れが悪くなって論旨が伝わりにくくなるかなー。いっそのこと切り捨てようかなー、いやいや末尾に置いて補足的な扱いにしようかな」
などと、あーでもないこーでもないと考えます。
でも、これができてしまうと、実はそこから先は“作業”に近いです。

で、その骨格ですが英語ではアウトライン(outline)という言いかたが一般的みたいです。ですから、アウトライン作りに使われるアプリは「アウトライナー」(outliner)と呼ばれます。自分の周囲には、これを使ってる人はいないようです。

自分は何年か前に、iPhoneアプリをいくつか試しました。そのときは文字の表示のされ方とか、エクスポート機能に不満があって、しっくりくるものを見つけられませんでした。
しかし最近、iPhoneアプリとWebサイトが連携していると知り、久しぶりに「WorkFlowy」を使ってみました。

例えば、電車での移動中などでiPhoneアプリで、「これは盛り込みたいなー」という見出しだけをどんどん書き出し、どんな順番にしたらいいか、見出し(ノード)を入替えたり、階層化したりします。これが、文章を書き始める前に必要な、考えをまとめる作業、「文章の骨格づくり」「設計図作り」なんです。

PCに向かっているときには「WorkFlowy」のWebサイトで、ブラウザに向かって文章を入力していきます(見出しの下の階層に)。書いた文章は、見出しと同じように後で自由に移動できます。

*今月は1本もエントリーを書いてなかったことに気付き、あわてて身近なネタを書きました。

2014年6月29日日曜日

新しいストレスとの付き合い方 〜ハーバード大学の実験から

『スタンフォードの自分を変える教室』の著者として一躍有名になった、ケリー・マクゴニカル教授が「ストレス」との付き合い方について、ストレスフルな我々現代人に新しい視点を与えてくれました。

まず、マクゴニカル教授は、ストレスが健康の敵なのではなく、「ストレスは健康に悪い」という信念(強い思い込み)こそが健康の敵のようだ、という研究結果に着目しました。

──重度のストレスを感じていてもストレスは健康に悪いと信じていない人々が死亡する確率は非常に低かった。

そこで、マクゴニカル教授は、「ストレスに対する考え方を変えれば、人はより健康になれるのではないか?」と考え実験を行った。すると、仮説を裏付ける結果が得られた。

ストレスを感じたら、それを軽減させようとすることが従来のストレスマネジメントです。
ストレス反応を「身体が新しいことに挑戦する準備をしているんだ」と捉える考え方を持つ。
これが、マクゴニカル教授が提唱する、新しいストレスマネジメントの考え方です。

自己効力感やポジティブな信念体系は、その人の行動に大きな影響を与えますが、意識的にはコントロールできない身体反応にも影響をおよぼす(ストレスフルな状況下でも、血管の収縮を起こさない、心拍数の上昇を起こさないなど)そうです。


[参考]
TEDでのスピーチの書き起こし(日本語)がログミーに掲載されています。
教授のスピーチ動画はYouTubeに。

2014年6月22日日曜日

地球儀の向きはどちら?

お子さんのいるオタクでしたら、たいていの家に地球儀があるでしょう。
ご自宅になかったとしても、地球儀がどんなものかは、たいていの方がご存知でしょう。
さて、この地球儀、どの向きに置いてます?(置きますか?)
地軸って傾いてますから、置き方によって日本の位置の見え方が変わりますからね。


そうそう、昨日は夏至でしたね。

2014年5月29日木曜日

社員の業績は業績考課によって向上などしない。

話題になってるようなので、『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』読んでみました。

著者のカレン・フェラン氏(経営コンサルタント)は、様々な経営理論を「間違っていた」と指摘していますが、特に業績管理システムについて痛烈に批判しています。

フェラン氏は、業績管理システムの前提として次の4つを挙げ、「そんなことはない」と否定しています。
(1)業績管理システムは公正で客観的である
(2)上司の評価を受け点数をつけられることで部下の業績は向上する
(3)従業員はお金でやる気を出す
(4)従業員は制度を悪用しない。

そして事業会社での自身の経験から、「仮にこれらの前提が真実だとしても、このシステムを実施・運営し維持するために費やされる事務作業の負担は大きすぎる」と。

では、どうすべきか?
「日々のふれ合いの中で指導やフィードバックを行ってこそ、社員の業績は向上する」とフェラン氏は言います。

部下の業績管理に膨大な時間を費やすよりも、部下の成功を願い、それを態度に表し、良い関係を構築するために時間を使うべき、とのこと。

2014年5月28日水曜日

どんな仕事でも、目の前の人を喜ばせることができなければ、その先はない

漫画家・弘兼憲史さんがコラムで言っていることですが、手厳しいです。

弘兼さんは今、相手(編集者)の指示通りにやった仕事を振り返って「やっぱり言うとおりにしたのは失敗だった」と納得していないものもあるそうです。
しかし、「自分がキャリアを積み重ねていく上では決して間違った選択ではなかった」と言います。

ですから、若い人に対して、
「どんな仕事でも、目の前の人を喜ばせることができなければ、その先はない」
「まず上司を喜ばせる。すべてはそこから」
ということを伝えたいそうです。

[DAIAMOND online]
http://diamond.jp/articles/-/53664?page=2

2014年4月4日金曜日

トランジションの新版が出た

もう、書籍の購入は99%がAmazonだけど、久しぶりに書店内を1時間くらいかけてブラブラしてみた。
やはり、Amazonのレコメンドとは違う発見があり、面白い。

面白く、思いがけない発見のひとつが、ウィリアム・ブリッジズ(William Bridges)の『トランジション』。13年ぶりの新装改訂だそうだ。

ブリッジズのトランジション理論についての概要は、キャリアデベロップメント理論の中で学んだが、著書は読んでいない(実は英語版を読みかけて挫折、放置した)。

ここで出会ったのも縁なので、この本を買った。
Amazonで。

2014年3月16日日曜日

新卒採用 〜企業と学生との溝

先日、リクルートキャリアのプレス発表会に行ってきました。2014年春入社の新卒採用に関する企業の「採用充足度(数)」や「満足度(質)」などのレポートが報告されました。

いまその資料が手元にないので、個人的に印象深かったことをメモしておきます。

1.

読み取れる傾向として、企業は目標採用数に達しなくても選考基準は下げない。いわゆる「厳選採用」は変わっていないということが確認できた。
つまらないことだけど、目を背けることができない現実だ。

2.

書類選考を経て面接に駒を進めた100人の学生のうち、内定を得られるのは約12人。

3.

面接において企業が見ている/知りたいことと、学生がアピールしている(語っている)ことには、かなりのズレがある。
つまり多くの学生は、面接官があまり関心を持っていないことを、懸命にしゃべっている。例えば、アルバイトの経験、体験談など。
企業側が知りたいこと、評価のポイントなど、多くのが資料が公開されていると思うのだが...。昨今の学生はネットなどで多くの情報収集ができるはずだが、ひょっとしたら仲間内のクチコミや掲示板の噂話でとどまり、まともな機関の調査データは目にしていないのだろうか?
正しい知識を有したキャリアアドバイザーの助言があれば、この程度の「ピントがズレてる」という失敗は避けられると思う。

4.

企業が「不満」と感じているのは、学生が「企業研究が足りない」という点。※それが理由で不採用にしているかどうかは本調査ではわからない。
個人的には、学生に個別企業の十分な研究を求めるのは無理があると思う。アナリストでもあるまいし。多くの学生は「ぜひ御社で!」なんて思ってなく、「どこかの会社に潜り込まなきゃ!」と思ってる程度なのだから。
大事なことなので繰り返すけど、「企業研究が足りない」ことが理由で不採用にしているかどうかは本調査ではわからない。

5.

就活に使っている媒体は実に多様。ただし、就職課が強く勧めているのに学生がほとんど活用していないものがある。それは、「OB・OG訪問」。
学生は面識のない人を訪問することをヘジテイトしているのだろうか? 志望企業でなくても近い業界で働く先輩を訪ね、社会人から話を聞くのは無駄ではないと思うのだが、学生はOB・OG訪問をやらない。就職課が強く勧めているというのに。要するに、やりたくないことはやらない、ということ?

2014年3月14日金曜日

世界のトップエリートの働き方

先週、成田空港内のショップでたまたま見かけて、マニラから帰国したら読もう思いAmazonで注文しておいた。
月曜日にさっそく読み始め、昨日読み終えた。「秀逸な表紙&帯コピーだな~」と思いました。

自己啓発書、ハウツー本という色合いは薄いです。全体的には、実務経験者が見た、投資銀行やコンサル、資産運用、プライベート・エクイティなどの業界紹介、仕事紹介的な内容です。
ほんの数カ所、どんな業界の仕事にも通じそうな、新人時代から心がけるべき働き方が書いてあります。

序章に7つのトップエリートの共通点が挙げられています。この中で、次の2つは、エリートでなくとも、専門技能・知識がなくても、絶対に肝に命じるべきことだと思いました。

1.
信頼と評判を第一に大切にする  
〜「誠実で信頼できる」という評判こそ、パワーと人脈の源
"公明正大であること、少なくとも「そう認識されること」。それこそが長期的に自分のキャリアを守ることを、トップエリートたちはよく理解しているのである。"


2.
若手時代は目の前の仕事に全力投球
〜つまらない仕事も完璧にこなして、面白い仕事を獲得していく

"目の前の小さな仕事を完璧にこなせていないのに、「もっと大きな仕事を任せろ」といわれても、上司や会社の立場からすれば危なっかしくて仕方がない。そんな若手に、とうてい大きな仕事を任せることはできないのだ。"
"世の中のほとんどの仕事では、目の前のつまらない小さな仕事を完璧にスピーディーにこなせてはじめて、より大きな、面白い、責任のある仕事を任せてもらえるようになる。「自分だからこそできる面白い仕事を」とばかりいっていても、そんな仕事がいきなり自分に舞い込んでくるはずがないのだ。"


自分の働きぶりを、改めて振り返ってることにします。

2014年2月17日月曜日

キャリア開発についての2つの視点

以前読んだ本を読み返していたら、HotchikissとBorrowという社会学者の見解が紹介されていました。(以前読んだ時には気にもとめなかった部分で、まったく記憶に残っていませんでした)
2人は「キャリア開発」について、心理学者と社会学者の視点の違いを3点挙げています。


第1 キャリアについて
心理学者は、個人に注目する。
社会学者は、職場で職階であったり、組織構造であったり、同僚グループのダイナミクスであったり、職務満足度と職場への貢献の関係など、より広い視点でキャリアを考える。

第2 意思決定について
心理学者は、個人はどのように自分自身で意思決定を行うかに関心を払う。
社会学者は、組織や社会の要請が個人の意思決定にどのような影響を与えるかに関心を持つ傾向にある。

第3 職務満足について
心理学者は、どのような人間の要素(例えば、興味、個人特性など)が、仕事の成果や職務満足に影響を与えるかに関心を払う。
社会学者は、どのような組織の要因や特徴、公式のまたは暗黙の組織内のルールが働く人に影響を与えるかに関心を持つ。


あくまでも「どちらかというとこういう傾向がある」ということで、なるほどと思います。
なるほどと思う一方で、社会学者の視点についての記述は、キャリア開発についての視点というよりも、組織開発についての視点なのではないかな、とも思います。
上記の「心理学者」という言葉を、「キャリア開発」もしくは「キャリアカウンセリング」に、「社会学者」という言葉を、「組織開発」もしくは「組織人事マネジメント」という言葉に置き換えても、しっくりくるように思います。


自分自身、キャリアカウンセリングを学んだ後に、ビジネススクールで組織人事マネジメント論を履修しましたが、教わった理論・議論したテーマは、上記ような視点の違いを感じました。

2014年2月9日日曜日

ビッグデータ活用で 「うつ休職」の前兆を発見できるか?

興味深い記事。
結論を言うと、勤務データの分析で、放っておいたら悪化してしまうメンタル不調の初期状態の社員に気づくことはできると思う。
実際にメンタル不調によって休職した社員の勤務データから、幾つかのパターンが見つかったのでしょう。

しかしちょっと気になるのは、「うつ」という言葉。メンタル面の不調をひとくくりに「うつ休職」とか「うつ病」と表現するのは、少し乱暴なのではないか? 
さらに、記事には"うつ病で休んだ人の性格の特徴や"とある。本当に統計的に、うつ病と病前性格の関連がに関連が見つかったのだろうか?

もちろん、ストレス耐性が弱い人はいるので、上司・会社がそれを把握する助けに、アセスメントを活用するのはいいと思う。ただし、頼りすぎるようになってはいけない。
また、どういう種類のことにストレスを感じるのかは、人それぞれだということも重要。

【関連】

仕事が減っている

本日の朝日新聞の記事。アメリカの失業率は下がってきているが、実際には「不本意な就業」を余儀なくされてている人々(不完全就業者)がたくさんいる。雇用の「質」が悪くなっていると。
アメリカ政府では雇用を増やすために「製造業重視」だったが、残念ながらもはや製造業は多くの雇用を産まない。


2014年2月2日日曜日

1日たった37分、3カ月の勉強でも国家資格を合格できます!

以前、ある勉強をしたときに、ついでにその所要時間を徹底的に記録してみたら、なかなかおもしろいデータを得ることができました。

そこで、その第2弾をやってみることにしました。
題材は、現代社会のビジネスパーソンにとっては「一般教養」の範疇にはいるようなIT関連の知識。はっきりいって、この試験に合格すること(資格を取る)ことは自分の仕事にはほとんど意味はありません。繰り返しますが、意味はありません
けれど、「一般教養」の範疇のものなので、体系的に学習して基礎(の基礎)を理解しておくのは無駄ではないかもねーと思いました。※ボクは「資格コレクター」ではありません。


【試験結果】
結果から言うと、880点/1000点で、合格!
ただし、終盤にすごく難しい問題があって、脳みそから汗をかくほど考え、ものすごく疲労した。


【学習時間】
テキストを書店で買って、基本的には通勤時間を使って学習。土日はほとんどやらない。これをちょうど3ヶ月(学習時間の集計をしやすいように)。1日の学習時間の目標はとくに掲げませんでした。「なるべくがんばろー」といった感じ(笑)。

3ヵ月のトータル学習時間は57時間で、1日平均は37でした。

この数字を使うと、「IT関連じゃない文系ビジネスマンでも、1日たった37分、3カ月の勉強で880点取れます!」という表現は嘘ではない。

しかし、過去に時間の計測をやったことがある自分は、「1日平均たった37分」という表現を見ても、決して「ラクだな」とは思いません。そういう感覚が分かったのが収穫のひとつ(笑)。“平均”という言葉にダマされてはいけません。

ボクの通勤時間のうち、電車に乗っている正味の時間は往復約90分ですが、その通勤電車内の時間を、毎日毎日きっちりと学習に当てることはかなり困難なのです(自分の場合)。


【学習時間の分析】
結論: 習慣ができるまで2カ月かかった。
推論: スタート間もない頃に、「無理して飛ばすよりも毎日継続」を実行できれば、早く習慣化できるかもしれない。※「習慣ができる」とは、学習0分の日が減ることなので。
〔図1〕日々の学習時間のグラフ(上)
これを見れば、「3ヶ月間の平均学習時間と、各月の学習時間は異なる」ことがお分かりだと思います。

最初の1ヶ月間は、学習してない日が明らかに多い。
特に、学習が習慣になっていないスター間もない頃は、ある日に頑張って1日1時間やったとしても、翌日サボってしまうと、2日間の平均はたちまち30分になってしまう。次の日もサボると、その3日間の平均は20分になってしまう。
では、4日目にどれだけ学習を頑張れば、この4日間の平均学習時間を37分にすることができるか?
 ↓
 ↓
 ↓
答えは、
1時間半! (正確には1時間28分)
これはちょっとツライ。
でも、学習が習慣になっていない頃は、実際にこのようなことがしょっちゅう繰り返されます(自分の場合)。
ツライから、「やったつもり」になってしまう。けど、ほんとは全然やってない(笑)。
学習時間を計測すると、この「やってるつもり」が錯覚だということが、ハッキリとわかります。

2ヶ月目になって、「短時間でも、毎日コツコツ」という変化が起こります。
つまり、習慣になるまでには2ヶ月くらい要するということ(自分の場合)。

3ヶ月目になると、「短時間でも、毎日コツコツ」をベースとしながら、「2日に1回くらいは、もうちょっと頑張る」という感じになる。
〔図2〕日々の学習時間のグラフ2
このグラフに追加した橙色の折れ線グラフは、7日間の学習時間の移動平均です。


【備考1】
この試験は「ストラテジー系」「マネジメント系」「テクノロジー系」の3分野で構成されており、出題は100問。合格ラインは、1000点満点で600点以上の総合評価かつ、3分野のいずれも300点以上(1000点満点)の得点。受験者の合格率は約50%。
*個人的には「3分野のいずれも300点以上」という合格基準は甘すぎると思う。「苦手分野が3割しか得点できてなくても、他の2分野で点数を稼げばOK」では、3分野必須で構成している意味がない。せめて、「3分野のいずれも500点以上」にすべきと思う。ちなみに、自分の分野ごとの得点は、870点、825点、865点


【備考2】
学習時間の計測に使ったのは、例によって「aTimeLogger」です。
 〔参考記事〕本当のところ時間はどこに消えているのか?
 http://tanaka-tsuyoshi-dts.blogspot.jp/2013/02/blog-post_7.html
 〔参考記事〕けっこう頑張ったな~。で、いったい何時間やったの?
 http://tanaka-tsuyoshi-dts.blogspot.jp/2013/06/blog-post_22.html
暗記学習に使ったのは、例によって、「Everword」です。
 〔参考記事〕暗記学習に適したアプリは?
 http://tanaka-tsuyoshi-dts.blogspot.jp/2013/04/blog-post_19.html
 〔参考記事〕やっぱり暗記学習にEvernoteを使う
 http://tanaka-tsuyoshi-dts.blogspot.jp/2013/04/evernote.html
以上。

2014年1月17日金曜日

うつ病の発症と性格は関係ない!?

うつ病は、「几帳面な性格人」がなりやすい。そんなふうな先入観、ありませんか? 

実はボクもなんとなく、「几帳面な性格人」や「人のことをすごく配慮するようなタイプの人」が、うつになりやすいのではないかと思っていました。

某キャリアカウンセラー団体のテキストには以下のような記述もあります。
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うつ病では、体質、性格、幼少期の出来事、ストレス、社会的支援の有無が発症に関係すると考えられています。性格では、「人との争いを避けるような性格」、「几帳面な性格」~。
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ところが、うつ病の発症のしやすさと、人の性格を関連付けてとらえているのは、日本だけのようです。つまり、世界の常識ではないのです。これはちょっとした驚きでした。

『うつ病の常識はほんとうか』(著=冨高辰一郎)には以下のように書かれています。
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米国の代表的な精神医学の教科書である『カプラン臨床精神医学テキスト』には、うつ病の病前性格について次のように書かれている。
うつ病にかかりやすい性格の特徴や型を一つに限ることはできない。
(略)
また世界中の医学生向けの精神医学の教科書である『オックスフォード精神医学』では、「単極性うつ病性障害が単独の人格のタイプと関連することは見出されていない」とシンプルに書かれている。
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「うつ病は几帳面で他者配慮性のある人がなる」という学説を提唱したのは、ドイツの精神科医テレンバッハで、このような性格特徴をメランコリー親和型性格と名付けました。しかし現代のドイツでは、うつ病の病前性格として、この概念を強調しなくなっているそうです。


もし「うつ病は几帳面で他者配慮性のある人がなる」が根拠のないことであったら...。その思いこみにもとづいて日々の判断をしてしまうと、本来ケアが必要とされている同僚・部下のサインを見落とすことにつながりかねませんよね。