2017年10月27日金曜日

#オンラインカジノ事業者のギャンプル依存対策

ヨーロッパおよびアジア地域でオンラインカジノを運営する500.comは、6000万人以上の会員のプレイ履歴の分析から「危険な遊び方」に陥るユーザーの兆候を見出し、過度ののめり込みを事前に防止する仕組みを構築した。具体的にはユーザーへのアラートの発報やベッティング機能の停止だ。
同社では収入、通常の消費金額、趣味など様々な属性によりユーザーを6つに分類しており、このうち2グループを特に注意が必要だとしている。危険な遊び方の兆候は、ゲーム種目の変更、賭ける頻度や額の変更から読み取る。

500.com社は今年8月に日本法人を設立し、このほど同社ギャンブリング、ロタリーのユーザーのプレイ履歴データを活用した「ギャンブル依存症対策」について、NPO法人依存学推進協議会と共同研究のためのテーマ検討部会を 11 1日に立ち上げる。

1026日に都内で開かれた記者会見で、500.comCEOは、ギャンブル依存症対策は「発症後の対応」だけではなく、依存症予備軍を特定することによる「事前予防策」が重要だと捉えていることを強調した。事前防止は、個々のプレイヤーの遊び方をトラッキングしながら、リアルタイムで当人に注意を促すことができる仕組みによって可能になる。

記者会見では興味深いデータがいくつか示されたが、その一つが、種目によるギャンブル依存症の発症可能性の違い。同社のデータによると、「発表結果の頻度(間隔)」が短い種目、ーいわゆるリゾルトが速い種目ー ほど可能性が高いという。
「やはりそうか」という印象だ。

概してランドベースのテーブルゲームよりもオンラインカジノの方が間隔が長い(=結果が出るまでの時間が遅い)。一般的なカジノゲーよりも、スポーツくじの方がリゾルトが遅い。
カジノのテーブルゲームの比べてゲームサイクルが長いパチンコ・パチスロは、リゾルト遅いので、この論に従えば、ギャンブル依存症の発症可能性は低いということが考えられる。

ギャンブル依存症(もしくは過度ののめり込み状態)の発症可能性は、本人の特性によるところが最も多いと思う。次にアクセスのしやすさではないか? ゲームによる違いについて、リゾルトの間隔の影響は大きいと思うが、それだけではないはず。例えば、ハズレだ時の「もうちょっとだった!」という感覚。あるレポートで読んだが、この時の脳の興奮状態は、当たった時の反応とソックリらしい。こういう要素の有無も影響するのではないか。

膨大な量顧客のデータを収集・分析できるオンライゲーミング事業者の持つギャンブル依存症の「事前防止」対策ノウハウをランドベースのゲーミングに応用するには、プレイヤーの遊び方をトラッキングしなければならないという大きな課題があるが、日本のギャンプル依存対策は、エビデンスに基づく研究が不足している分野なだけに、大きな進歩が期待できるような気がする。

2017年10月18日水曜日

#米大手カジノ企業が日本市場に期待を寄せているという2つの記事を比較

タイトルにある「アメリカの大手カジノオペレーターが日本市場に期待してる」ということは、すでに多くの方がご存知でしょう。その理由についてではなく、それを報じている2つの記事を読み比べて、「あれれ?」と思ったことをご紹介したいと思います。

結論を先に書きますと、驚くほど似ている、ということです。異なるライターが書いたものですが。

ワシントンポストの「American gambling companies are lining up to open casinos in Japan」という記事と、CASINO GUARDIANの「US Gambling Giants Remain Interested in Entering Japan’s Gambling Market」という記事です。いずれも16日(月)にUPされたものだけど、引用が驚くほど似ています。


■ワシントンポストの当該記事
https://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/american-gambling-companies-are-lining-up-to-open-casinos-in-japan/2017/10/14/5d4aebee-a904-11e7-8ed2-c7114e6ac460_story.html?utm_term=.112330a7ed6e

■CASINO GUARDIANの当該記事
http://www.casinoguardian.co.uk/2017/10/16/us-gambling-giants-remain-interested-entering-japans-gambling-market/


■ワシントンポストの記述

Executives from Las Vegas Sands and MGM Resorts have repeatedly said they would each invest as much as $10 billon in Japan, while Lawrence Ho, president of Hong Kong-based Melco Resorts and Entertainment, said he would spend “whatever it takes” to get a foothold in Japan.


■CASINO GUARDIANの記述

Both MGM Resorts’ and Las Vegas Sands’ executives have reported that they consider making massive investments of about $10 billion in Japan, while the President of Melco Resorts and Entertainment has explained that he would spend whatever it takes in order to see his company set foot in the country


両紙とも上記の文の次にサンズのゴールドシュタインCOOの言葉を引用します。

■ワシントンポストの記述

“We’ve been trying to come here for many years,” Robert G. Goldstein, the president and chief operating officer of Las Vegas Sands, said in an interview this month. “It’s got huge appeal internationally. . . . It’s a very large gambling opportunity.”


■CASINO GUARDIANの記述

Last week, the President and Chief Operating Officer of Las Vegas Sands, Robert G. Goldstein, shared that his company has been trying to set foot in Japan for many years now and once again said that the country is perceived as a really large gambling opportunity.


そしてこれに続くのが日本のIR推進法/実施法の話という点も同じ。

■ワシントンポストの記述

Casinos were illegal in Japan until parliament passed the controversial Integrated Resort Promotion Law in December, and they will be allowed only as part of a wider resort that will have to include a hotel, an international conference hall and other entertainment facilities.


■CASINO GUARDIANの記述

Casino gambling was not legal on the territory of Japan, until the local parliament passed the “Integrated Resort Promotion Law” in December 2016 – a piece of legislation that has brought some controversy. Under the new law, gambling in casinos will be allowed only as part of a larger resort that is required to include a hotel, an international conference hall, as well as other entertainment facilities.


両紙ともに「昨年12月にIR推進法が通過するまで、日本ではカジノは違法だった」と書いていますが、これは誤りで、いまだにカジノは合法になってはいません。IR推進法は、「IR実現に向けて、法律や制度の整備を推進すること」という法律であり、日本でカジノギャンブリングを合法化したものではありません。

そしてこの次に書かれていることも両紙同じで、時事通信が実施した世論調査の結果(回答者の3分の2がカジノ導入に反対している)を紹介します。

■ワシントンポストの記述

Yet many Japanese are concerned that social harm will come with casinos. A poll by the Jiji news agency conducted in August found that two-thirds of respondents were opposed to the introduction of casinos, with most worried about crime and gambling addictions.


■CASINO GUARDIANの記述

As mentioned above, the new law has been considered as a controversial one, as local residents have shared their concerns about the possible social harm that might be brought to the country by lifting the casino ban. A survey held by a local news agency this August showed that about two-thirds of the poll’s respondents did not back the introduction of casino gambling in the country, with most of them being concerned about levels of crime and gambling addictions.


そしてなんと、両紙ともにこの次に安倍内閣のスタンスに言及します。

■ワシントンポストの記述

But Prime Minister Shinzo Abe’s government argues that casinos will help boost Japan’s economy, ~


■CASINO GUARDIANの記述

However, the Government of the Japanese Prime Minister Shinzo Abe disagreed with local resident’s worries saying that an introduction of casino gambling would be beneficial, as it would help Japan boost its economy.


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もうこのへんでやめておきます。

2017年10月9日月曜日

#その仕事は誰のため? 何のため?

先日、マーケティングリサーチファーム時代の先輩と久しぶりに会い、色々話をしていたときに何かの拍子に、製品やサービスの中には、「不満を減らすことにはなるけど、満足を高めることにはつながらないことってあるよね」という話から、「やっても何の価値も生まない作業もというのもありますね」という話になった。当たり前の話なんですが。

そのときに自分はある同僚の仕事を観察したときのことを思い出したのです。丁寧だけど、それは形に残るモノではない作業プロセスであり、「そこを丁寧にして何の意味があるのかな?」としばし考えました。その結果、「それ、たしかに美しいけど、作業工程がひとつ増えて遅くなってるよ。同じことは後の工程でもやってるし」と指摘しました。
  
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顧客に対する仕事の中にもそんなことがあるはずです。

企業なり店舗は、ユーザー(使用者、顧客)に、より高い満足を感じてもらえるよう、製品やサービスを改善したいわけですよね。ところが、ユーザーの満足につながっていないことは多々ある。オフィス内の仕事にしても、店舗での仕事にしても、長年、慣習として引き継がれている作業の中には、「誰のために、何のためにこれをやっているのか?」が曖昧になっているものがあるはずです。

そういうものを見つけてくれるのは大抵、外の世界から来た人です。新入社員、中途入社社員、コンサルタント等々なのかもしれません。

今取り組んでいることの延長線上でもう少し頑張るという改善策もあるでしょうが、「そもそも、この製品(サービス、仕事)は、誰のためのものか、果たすべき機能は何か?」を思考の原点にして、ここから改善、解決を展開していくという問題解決法もあります。

自力で、非効率なこと、効果薄なことに気づくには、「そもそもこれは何のためにやってるのか?」「これは顧客・ユーザーに、どういう価値をどの程度提供しているのか?」「これは利益向上や再来店促進にどれだけの効果が期待できることなのか?」という、機能本位の思考方法を導入することが効果的です。

"果たすべき機能は何か?"というのは、下記のような色々な言葉で表現されていますが、言ってることは同じだと思います。

・どんな欲求を満たすためのものなのか?
・どういう目的を達成するためのものなのか?
・どういう困りごとを解決するするためのものなのか? 
・どういう用事を片付けるためのものなのか?


大抵の人は、電球という製品そのものが欲しいのではなく、明るさという、その製品が果たしてくれる機能が欲しいわけです。鋼のドリルというモノでなく、穴が欲しいわけです。つまり、「穴を開けてくれる」という、ドリルが果たしてくれる機能が欲しいのです。