2018年8月16日木曜日

宝くじネット投票 クレジット決済を導入

共同通信によると、総務省所管の「宝くじ」の2017年度の販売額が前年度比6.9%減少の7866億円にとどまった。
大きな要因として、人気商品である5種類ある「ジャンボ」の販売額が前年度より13.1%も落ち込んだことが挙げられている。

宝くじの販売額は2000年代前半がピークで1兆1000億円を超えていたが、以降は減少傾向にある。2015年度は前年を上回り9000億円を超えていたが、直近は2年連続して前年を下回っている。

総務省はこの状況の打開策としてかねてよりインターネット販売の拡大が議論されており、ついに今年10月から「ジャンボのインターネット販売が開始される。
宝くじ商品のインターネット販売は2014年1月から「ナンバーズ」で始められた。以降、2016年1月には「ロト」のインターネット販売が始められた。しかし、販売額全体の41.4%(2017年度)を占める人気商品の「ジャンボ」はインターネット販売されていなかったのだ。

もうひとつの販売拡大施策が、「クレジットカード決済の導入」だ。これまで宝くじのインターネット販売の決済手段は、インターネットバンキングによる口座引落しのみだった。クレジットカード決済の導入により、銀行口座に残高がない人が後払いで宝くじを購入できることになる。

「クレジットカード決済の導入」は、ギャンブル等への過度ののめり込みが社会問題として注目が高まっている中で、流れに逆行するようななりふり構わない販売拡大施策と言えないだろうか。

 

2018年8月9日木曜日

観光客の増加で「観光公害」が深刻化

8月8日の日経新聞(WEB)が「観光公害、マチュピチュやイースター島で広がる 」というタイトルの記事を配信しています。

◆世界の有名観光地で観光客の滞在を規制したり、流入に地元住民が抗議したりする例が相次いでいる。
◆観光客の増加で、観光地の受け入れ体制整備が追いつかず、環境汚染(ゴミの処理が追い付かない)や地元住民との摩擦が「観光公害」として表面化してきた場所がある。        
というもの。  


日本でもすでにその兆しはあると思います。

自分が昨年、京都を訪れたときにもそれを感じました。
錦市場はまるで東京の通勤電車内のような混雑ぶりで、その多くは明らかに観光客。この市場通りは「市民の台所」の役割も担っていたので、いまでもここで日常の食材を買いに来るお年寄りは多い。しかし、とてもじゃないが今、地元の人が錦市場で買い物をする気にはならないでしょう。

伏見稲荷大社も大変な賑わいっでした。正確に言えば、そこに向かうJR奈良線から千本稲荷までずっと、大勢の観光客がいた。
外国人観光客を観察しながら、駅と千本稲荷を往復しましたが、彼らは全然お金を遣っていない。せいぜいソフトクリームを買ってるくらい。千本稲荷のトンネルを歩くのにお金はかかりませんので。

観光客が増えればその町は潤うと期待しているわけですが、お金を使わない観光客は町にとってはむしろ負担になります。

どうすればよいかは、2つの考え方があります。
ひとつは、お金を遣ってくれる観光客にフォーカスして誘致活動をする。
もうひとつは、お金を遣ってくれるような○○○を作る。
後者は、「滞在時間を延ばすために宿泊施設を作る(その地でのFB売上も増える)」「外国人観光客向けに新サービス(着物・忍者・瞑想体験etc.)を提供する」など。

現状、訪日外国人旅行者の、<体験>への支出である「娯楽サービス費」は1人1泊あたりたったの600円です。これは「買物代」の8%に過ぎません。
TDLやUSJやロボットレストラン(笑)に来ている外国人観光客が大勢いるのも事実ですが、そこに行かない外国人観光客が圧倒的多数であり、平均したら娯楽サービスにはたったの600円/日しか遣っていないのが現実なんです。お金を払ってでも体験したい魅力的なコンテンツが日本にないのかもしれないですね。

昨年1年間に日本を訪れた外国人は約2800万人でした。政府はこれを2020年に4000万人に、2030年に6000万人にするという目標を掲げています。数を増やすと同時に、1人あたり消費額を上げるという戦略が必要でしょう。





2018年8月8日水曜日

新たな遊技機の「指定試験機関」GLI Japanへの期待と疑問

8月6日付の官報がパチンコ業界関係者、カジノ業界関係者を驚かせている。「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」第20条第5項に規定する指定試験機関を指定する規則の一部が改正され、一般社団法人GLI Japanが指定試験機関が加わったことが公表されたからっだ。指定試験機関は長らく一般財団法人保安通信協会(保通協)の独占状態にある。かつて指定を受けた機関はあったが、機能した実績はなく撤退している。

指定試験機関の申請にあたっては、「試験事務を実施するための機械、器具その他設備の種類及び数を記載した書面」の提出が必要であり、認定または検定に必要な試験の実施に関する事務を適正かつ確実に実施することができると認められることが審査基準にあることからも、一般社団法人GLI Japanが遊技機の試験をする能力を有していることは間違いない。ただし、実際に試験機関として機能するか、また、機能する意図があるかは不明。

世界のゲーミング業界で「GLI」といえば、カジノゲーム機器などの試験・認証を行っているアメリカの民間企業Gaming Laboratories International LLC.を指す。GLIはゲーミング規制当局や製造メーカー、運営事業者を顧客に持つ業界最大手で、世界に23の拠点を有する。

現時点で米GLIのWEBサイト内には日本拠点の記述はなく、一般社団法人GLI Japanと米GLIとの関係は不明。

一般社団法人GLI Japanは保通協の独占を切り崩すコンペティターになるのか、連携し何らかの役割分担をするのか。もしくは、将来、日本に統合型リゾート(IR)が誕生しカジノが開業した際に、カジノ機器の試験・認証業務に乗り出すための布石なのか。
    *   *   *
米GLIに、一般社団法人GLI Japanとの関係を問合せ中なので、回答がありしだいお伝えしたいと思います。

【追記】
一般社団法人GLI Japanには滝澤氏のほかにもう一人、代表理事がいました。その方はIan Hughes氏で、米GLI のバイスプレジデントです。

【参考】
<風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律>
第二十条 第四条第四項に規定する営業を営む風俗営業者は、その営業所に、著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして同項の国家公安委員会規則で定める基準に該当する遊技機を設置してその営業を営んではならない。
2 前項の風俗営業者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該営業所における遊技機につき同項に規定する基準に該当しない旨の公安委員会の認定を受けることができる。
3 国家公安委員会は、政令で定める種類の遊技機の型式に関し、国家公安委員会規則で、前項の公安委員会の認定につき必要な技術上の規格を定めることができる。
4 前項の規格が定められた場合においては、遊技機の製造業者(外国において本邦に輸出する遊技機を製造する者を含む。)又は輸入業者は、その製造し、又は輸入する遊技機の型式が同項の規定による技術上の規格に適合しているか否かについて公安委員会の検定を受けることができる。
5 公安委員会は、国家公安委員会規則で定めるところにより、第二項の認定又は前項の検定に必要な試験の実施に関する事務(以下「試験事務」という。)の全部又は一部を、一般社団法人又は一般財団法人であつて、当該事務を適正かつ確実に実施することができると認められるものとして国家公安委員会があらかじめ指定する者(以下「指定試験機関」という。)に行わせることができる。

2018年8月5日日曜日

日本はカジノハイローラーに周遊観光してもらうつもりですか?


公共事業の1ピースという不安

「日本には四季がある」とか「美しい自然がある」「食べ物が美味しい」というお国自慢を聞かされてる外国人の中には、
「オレの国にも四季はある(世界中ほとんどの国に四季はある)んだけどね…、美しい景色だって美味い食も日本以外のとこにもあるんだよね」
と思ってる人もいるに違いない。

日本の地域地域にあるこれら観光資源と呼ばれるものは本当に、多くの外国人観光客を引き寄せるほどの強力な集客コンテンツなんだろうか? 富士山の眺めや京都の神社群のように突出した眺め、場所は別として。

「地域の魅力の発信」って、IR施設を誘致しなくてもできるし、すでにやってるのではないか? 外国語(まず中国語、英語)で情報発信する、街の案内表示に外国語を増やす、海外の旅行博に出展して海外の旅行業者にアピールする、等々。

その結果、訪問者に占める外国人客の割合があまり高まってないとか、外国人客の消費金額が少ない、地域にあまりお金が落ちてないという状況だとしたら、それをどうとらえるか?

ひとつは、「他の地域と比べて外国人客にとっては魅力が低い」というとらえ方。

もうひとつは、「ポテンシャルはあるが、まだ交通インフラや観光拠点がじゅうぶんに整備されていない」「ポテンシャルはあるが、まだ、点在する地域の魅力を統合できていない、連携できていない」というとらえ方。後者は、要するに「お金があれば...」ということ。

企業であれば、商品なりサービスなりの魅力度を高めることで売上が拡大すると確信しているなら、お金を調達して投資します。しかし全国各地の地方自治体で、過去に、第三セクターが誰も利用してくれない施設を作ったりして多額の赤字を垂れ流し、あげくに二束三文で民間に売却、という経験があるので慎重です。
そこで、統合型リゾート(IR)の誘致です。IR施設自体は民間事業者の投資によって建てられます。そこに自治体の税金は投じられません。IR施設に多くの集客をしてもらうために、空港からIR施設までの交通インフラ整備などは誘致自治体が行います。

では、IR施設から少し離れた「ポテンシャルはあるのだが...」という場所の、観光振興のための整備はどうするのか? 

国と地方自治体は、IR施設内のカジノ事業の売上(GGR:Gross Gaming Revenue=カジノ行為粗収益)の30%を納付金として徴収します。半分は国へ、もう半分は地方自治体へ。つまり地方自治体には永続的にGGRの15%が入ってくるのです。法人税と違って、IR事業者の採算など考慮せずに、売上(GGR)からまっさきに徴収しますから、自治体としては心強い財源です。

こういう心強い財源が生まれると決まれば、自信をもって地方債発行などもでき、地域の観光振興のためのさまざまな整備ができます。巨大な公共事業のスタートです。


IR施設に誰に来てほしいのか?

個人的にはカジノ売上(GGR)に対する納付金のすべてが「観光振興のため」に使われることに違和感があり、福祉や教育にも使うべきではないかと思うところです。IRを誘致しようとしている自治体の住民の方々は、国が定めた「IR整備法」について議論するよりも、地方自治体が上記カジノ税を何に使う計画なのかについて議論なり監視なりをすべきと思います。

カジノ税を見込んでいたるところで道路工事が始まり、「地域文化・魅力発信館」といった観光案内所や○○ミュージアムが建てられ、フタを開けてみれば利用者はわずか、儲かったのは建設業界と地域経済界の一部の人...なんてことになりかねません。

IRを誘致しようとする都道府県は国に対して、地域全体をどのように整備するかという計画を提出して審査を受けます。
もうちょっと詳しく説明すると、次のような流れです。
①地方自治体はIR事業者を公募して選びます。
②地方自治体はIR事業者からの提案に基づいた「事業基本計画」を作ります。これは、IR施設の事業計画です。
③上とともに、地方自治体は、IR施設ができることによる懸念事項への対応、周辺インフラの整備や周辺環境対策等の施策を含めた「区域整備計画」をIR事業者と共同で作成し、これを国に提出します。ポイントは、この計画は、IR施設の外側をどうするかというものだということです。

この区域整備の費用のすべてがカジノ税だけで賄えるとは思いませんが、大きな財源になることは間違いありません。住民負担が少ないという点で、画期的な地域振興計画だと思います。

しかし冒頭に書いたように、そもそもその地域の文化なり自然なり特産品が、外国人観光客の嗜好に合うとは限りません。魅力に感じられないものをいくらアピールしても集客に結び付きません。

少なくとも、地域の収益源となるIR施設に関しては、集客コンテンツを考える際に、「我が地域の魅力」というプロダクトアウトの発想を抑え、「外国人プレミアム層の嗜好に合わせる」というマーケットインの発想をもっと盛り込むことが必要ではないかと思います。

カジノ施設の役目は稼ぐこと!

しばしば、マカオのIR産業のノンゲーミング事業の強化を、「マカオのIR産業はノンゲーミング事業へとシフトしている。ノンゲーミングも大きな需要がある」という文脈で語られることがあります。しかし、当方は、マカオのIR施設がノンゲーミング事業を強化しているのは、ゲーミング売上への極端な偏重の是正のために、強引に需要喚起のためにノンゲーミング施設を作っていると考えます(それは正しい方向性だと思います)。

マカオの観光産業に占めるゲーミング売上はいまだ90%です。しかも、ノンゲーミングの多くを占めるのがホテル宿泊ですが、1000数百室あるIR施設のホテル宿泊の稼働の50%以上がカジノ客へのコンプ(特典)です。もちろん、コンプでなく自費で泊まってカジノで遊んでいる客も大勢いるわけです。
マカオで増えているノンゲーミング施設はIR施設の中に造られたものであり、IR施設に来た客が数キロ離れた観光・レジャースポットに遊びに出かけているわけではないのです。集客の「核」はあくまでもカジノだということを忘れるべきではありません。

日本の場合、まず、カジノにお金を落としてくれる外国人プレミアム層にIR施設に来てもらう必要があるのです。日本版IRの場合、来てもらったら、否応なく我が地域の魅力が目に入るような施設の作り方をすればよいわけです。
そして、IR施設に来た客の全員が、IR施設の外側の観光スポットに足を延ばしてくれなくてもいい(仕方ない)のです。
日本に来たカジノ客(外国人プレミアム客)はIR施設から出ずに空港に戻るかもしれない。しかし、がカジノ客が落としてくれたお金によって、地域の観光拠点が整備されて、カジノ客とは別の属性の訪問者が増えてくれれば成功なのです。


IR施設におけるカジノ施設には、その稼ぎによって他のあまり儲からない部門をサポートして施設全体の魅力を高めるという役目と、売上(GGR)にかかるカジノ税によって地域の観光振興に貢献するという重要な役目があります。
当方は、地方都市型IR施設こそ、カジノ客(外国人プレミアム客)の誘致と地域を周遊する観光客の誘致を、切り分けてそれぞれ考えたほうがよいと思うのです。

田中剛(Tuyoshi Tanaka)/editor