2016年10月22日土曜日

#消費者は総合点で判断する

企業・店舗は日夜、「いかに他店と差別化するか」に知恵を絞っているはずだ。だが、使用可能な経営資源は限られている。「どの部分で差別化するか」を考える上で参考になる考え方をご紹介します。

「こういう人々に来てもらいたい、買ってもらいたい」と想定している顧客の頭の中に、自店の独自の位置づけを築き、競合店とは違う独自のイメージを植えつけ、その価値を認めてもらい、優位な立場を確立するにはどうすればいいのか。

フレッド・クロフォードとライアン・マシューズは、ビジネスの要素を、「商品」「サービス」「価格」「アクセス」「経験価値」の5つに分類し様々な企業を評価した。その結果、優れた企業はこの5つのいずれか1つの要素で消費者が企業・店を心から信頼しよそで買うことを拒絶するほどの高いレベル(=市場を支配できるレベル)を実現し、他の1つの要素でその企業・店に好感を持つ「差別化」に成功し、残り3つの要素で「業界の標準(平均点)」を保ち受容されているという法則を発見した。彼らはこの法則を理論化し「ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」(5 Way Positioning Strategy)と名付けました。5つの要素のどれとどれを突出させるかという組み合わせ方が、その企業の戦略なのです。

例えば、ノースウエスト航空とサウスウエスト航空はともにデトロイト-シカゴ間を飛びます。便数とアクセスで勝るノースウエストに対し、サウスウエストは「経験価値」で市場支配レベルを、「価格」で差別化レベルを体現し、総合的に勝利を収めています。


Point
  • あらゆるビジネス(取引)は「商品」「サービス」「価格」「アクセス」「経験価値」の要素に分解できる。
  • 消費者が判断するのはこれらの『総合点』である。
  • 優れた企業は、この5つのうちの1つの要素で市場において圧倒的な地位にあり、別の1つの要素では他社より優位な立場にあり、他の3つは標準レベルにある(決して標準レベルを下回らない)。
  • 自社が商品やサービスを提供したい顧客は、何を価値と感じるか。自社にできることは何か。それらを分析し、効果的に市場支配や差別化が図れる要素をこの5つの中から選択し、それを際立たせていく。それこそが、企業・店舗の戦略である。


そもそも自社の社員はどう捉えているのか?


この考え方はパチンコホールのような業態にも当てはまるはずです。
ここでいう「商品」とは、取引の対象となる有形の商品および、役務や体験の提供といった無形の商品(通常、サービスと呼ばれる)も含む。パチンコホールが提供している「期待感を伴う遊技体験」も「商品」です。
次の「サービス」は、有形・無形の商品の提供方法を指す。ユーザー体験に付加価値をつける気配りやその表現方法です。
「アクセス」は立地などの物理的なものだけではく、店内の商品の探しやすさ、清潔さなども含む。
「経験価値」とは、商品を購入したりサービスを受けたりした結果、顧客が抱く感情や気分を指します。

ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略の核となるメッセージは、消費者が判断するのは『総合点』ということと、5つの要素の中の2つでどれほど成功を収めていても、残り3つの要素の1つでも業界標準を下回ってはいけないということ。ユーザーが求める最低水準を見誤ってはいけないのです。例えば、いくら接客が素晴らしくても、その他の要素(機械、設備、出玉)が最低水準を下回っていたら、お客は来ない。その逆もしかり。

もしも、ビジネスをこの5つの要素で捉えることに興味をもったのでしたら、ぜひ、会議で試していただきたい簡単なことがあります。経営幹部や店長、現場の社員たちに、自社の各店舗が、5つのうちのどの要素で<市場支配的レベル>にあり、どの要素で競合と<差別化に成功しているレベル>にあり、他の3つのうちどれが直接の競合たちのレベルに達していないのか、を書き出してもらうのです。
各部門や各階層でこの認識にズレがあるということは、企業が顧客に提案しているつもりの価値が、顧客に十分に届けられない運営がされているという可能性があります。

留意点を付加するならば、自社の「市場」や「商品」の定義が変われば、競合の定義が変わるということ。仮に、自社・自店の商品の本質を「リラックスして寛げる体験」と定義したら、同業他社(パチンコホール)でなくスターバックスやコメダ珈琲が競合となってくるでしょう。

この「ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」は、フィリップ・コトラーが2000年代前半に、「新しく興味深い理論」と紹介してから知られるようになった。また、星野リゾートの星野佳路社長が自著の中で、クロフォードとマシューズの著書を「経営をするうえで教科書としてきた」と紹介しています。



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