それに対して、「現場の関係者やパチンコ・パチスロの参加者からは、大幅な下落がなかったことに困惑の声が上がっている」そうです。それを根拠のひとつとしながら、「遊技業界ではコンサルが<暗躍>していて、彼らの都合がいいように作られた数字」、「強引なイメージ回復の目的のために作った数字」ではなかという疑問を呈する記事を何度か見かけました。
そういう調査結果が公表された裏事情をレポートするという趣旨の記事でしたが、その理由がまったく貧弱というか、軽い読み物と感じました。
しかし、遊技産業の、特にオペレーター企業の方があの記事を読んで「なるほど!」と思うようでしたら、それは危険だと思います。ちょっと冷静に、マーケティングリサーチ的に、分析的に考えていただきたいと思います。
ある記事の中では、現場の感覚と調査結果のズレ(遊技参加人口が減少したという結果でない)の理由を、上記調査の方が
「低投資の傾向が強くなったことで稼動と収益が下がり、参加人口が減っている印象を受けやすいのではないか」
と説明しています。当方はまったくその通りだと思います。
むしろ、記事の書き手や現場の遊技関係者なる方々が、「参加人口」の定義を理解しているのかという疑問を覚えました。
参加人口とは「1年間のUU」のこと!
おさらいしますと、『レジャー白書』も上記の調査も同様ですが、「直近1年間に1回以上参加した人の割合」を参加率として、年代ごと、性ごと、地域ごとに調べます。そしてそれぞれのセル(年代×性×居住エリア)参加率をそのセルの実際の人口と掛けて推計参加人口を算出。それらを足しあげることで日本全体の参加人口を推計しているのです。
ホールの現場が体感している客数はユニークな客数ではないはず。複数回来店者を重複してカウントしないユニークな客数は、よほどの努力をしなければわかりません(そういう努力をしているホールさんもあります)。
ほぼすべてのホールが、日々のある時間の着席人数を集計していますが、「1週間のユニークな客数」「1カ月のユニークな客数」を把握しているホールなどほぼないでしょう。
もし、店長や部長が「ユニークな客数ってどういう意味」と言っていたとしたら(ユニークという言葉の概念を知らなかったら)、そういうKGI設定をしていない、関心がないということでしょう。
ユニークな客数に関心がない、把握していないのに、なぜ、「増えたという調査結果はオカシイ」と感じるのでしょうか? その根拠は何なのでしょうか?
「稼働が落ちているのだから、参加人口が減っているにきまっている」という思い込みではないでしょうか?
思うに...、
ホールが「お客さんは減少している」と感じるのは、来店頻度が落ちているからです。
きっと、1カ月間UUとか1週間UUは減っているでしょう(来店頻度が減っているから)。でも、業界全体で “ 1年間UUはまだ減っていない ” のです。
ちなみに、18歳以上人口は約1億人なので、参加率が0.1%変わると推計人口は10万人変わります。
つまり、「参加人口が17万人増加した」とは、「参加率が前年調査と比べてわずか0.17%ポイント増加した」という結果が出たということです。微差ですね。
参考までにいえば、上記の会社(グローバル・アミューズメント)の調査サンプルは『レジャー白書』よりずっと多いし、調査エリアの割り付けや性年代の割り付けなどもきちんとしています。そして、参加人口微増という調査結果は、業界を代表するシンクタンクであるエンタテインメントビジネス総合研究所の調査結果と同じです。
週刊アミューズメントジャパン(アミューズメントプレスジャパン)は今年1月に実施した調査では、16年の参加人口は15年と同水準(数値的には微減)だったので、「参加人口は減っていない」と解釈した記事を2月に発表しました。
参加人口の定義、参加人口の推計手法を考えると、「17万人増加」という数字が出ても、当方からするとなんら不思議なことではありません。誤差の範囲ということはじゅうぶんにあり得ます。
むしろ、上記3社がそれぞれ独自に異なる市場調査会社のモニターをつかって同様の調査(いずれも『レジャー白書』よりサンプル数は多い)をして、「遊技参加率」を調べた結果が1%くらいのズレしかない。このことのほうがスゴイと思います。
さて、『レジャー白書』は2016年の遊技参加人口についてどういう調査結果を出すでしょう? 楽しみです。
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