これに参加してきたわけです。
GLDPとは何か?ということについてはこちらの記事で説明しています。
ざっくりとした印象というと、長崎開催のModule5では「IRとは何か?」という説明から始めたのに対して、「レジャー産業への経済学の応用」で始まった今回のModule6(マカオ開催)は普段の大学・大学院の講義に近いのではないかと感じた。
「レジャー産業への経済学の応用」を講義したRicardo Siu教授
リカルド・シウ教授の講義では、余暇需要の決定要因を考える中で、「お金」と「時間」が重要だとして、「需要の価格弾力性」と「時間の貧困」について説明した上で、高給消費者にとっての「統合されたリゾート」というコンセプトの魅力を論じました。
4日間、30時間というプログラムの中では、座学だけでなく、グループディスカッション(そして深夜にホテルの部屋で資料探しやスライド作成)、IR関連施設の視察もありました。個人的には、ウィン・パレスのバックオフィス・ツアーが刺激的でした。事前に大学にリクエストしていたものをほぼ見せていただいたので。これについては機会があればまた後日書きます。
7つのグループに分かれた参加者は講義の合間に
議論を重ね、最終日のグループ発表に臨んだ
日本からの参加者にとって特に有益だったのは、マカオのレスポンシブル・ゲーミング公共政策についてのレクチャーだったかもしれません。
日本でIRの導入にあたり議論が活発化したのがギャンブル依存問題ですが、今回の教授陣のひとりデイビス・フォン教授はマカオ政府に協力し、この問題に10年以上取り組んできた専門家です。
レスポンシブル・ゲーミングなどマカオの
公共政策を説明したDavis Fong教授
マカオではカジノ事業の1社独占体制が終わり、2004年5月、新たにライセンスを得た事業者のカジノ第1号「サンズ・マカオ」が開業しました。建設途中の開業半年の時点で投資を回収してしまったといわれる、すさまじい収益をたたき出しました。
これがマカオのカジノ産業の爆発的な拡大の始まりですが、同時にマカオ居住者のギャンブリング障害者数も増加することになりました。
しかし政府はこれに先立つ03年、マカオ大学内に「カジノ研究所」を設立し、初の全国調査である「マカオ住民のカジノ参加状況調査」を委託するなど本格的な実態調査を開始していました。
政府の委託を受けたデイビス・フォン教授らは、07年にレスポンシブル・ゲーミングの「指導原則」を提出。翌08年に政府は「責任あるギャンブリング政策」の推進を宣言、09年に政府社会工作局、博彩監察協調局、マカオ大学カジノ研究所が「責任あるギャンブリング推進」活動計画を発表しました。
04年から13年の間に相次いでカジノ施設が開業し、07年にはコタイ地区に「ベネシアン・マカオ」が開業しています。この9年間にマカオカジノ産業の市場規模は約9倍になりました。
しかし、産・官・学の連携によるレスポンシブル・ゲーミング政策の推進により、13年にはギャンブリング障害が疑われる成人の割合は、03年の水準を下回るほどに低下しています。
アメリカ精神医学会によるDSM4基準で「Pathological Gambling」(病理学的賭博=持続的で反復的な不適応的賭博行為。10項目中5項目以上に該当)の割合は、03年調査では1・8%、07年調査では2・6%、10年調査では2・8%、13年調査では0・9%と推移しています。
DSMの改訂版であるDSM5基準で集計された16年調査では、「深刻なギャンブル障害」の割合は0・5%、これより軽い「中程度のギャンブル障害」の割合は0・8%になっている。
日本は、マカオの産官学連携によるレスポンシブル・ゲーミング政策を、良い先例として大いに研究する必要があるはずです。
田中 剛・Editor
Report by Tsuyoshi Tanaka
[KEY]UNIVERSITY OF MACAU Global Leadership Development Program – Module 6
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