2019年7月23日火曜日

経済効果40兆円・雇用者180万人を生み出す米ゲーミング産業

アメリカのゲーミング産業が生み出している直接的な経済効果は約15兆円以上──。
これはアメリカゲーミング協会(AG A)とオックスフォード・エコノミクスが算出した2017年の数値。調達先の売上、調達先の雇用者に支払われた給与、納税額を合算すると経済効果は40兆円にものぼる。

2017年時点で全米41州には小規模カジノから大型IRまで含めてカジノを有する施設(以下、カジノ施設)は970以上あり、その総売上は894億ドル(※1)。カジノ施設とそのオフィス部門で働く雇用者が55万9千人。アメリカを拠点にするゲーミング機器会社の売上が62億ドル、雇用者が1万7千人。カジノ客が滞在中に消費する宿泊、小売、料飲や輸送などサービスを提供する事業者の売上が133億ドル、雇用者が15万1千人。これらゲーミング産業の売上合計1089億ドルに、雇用者72万7千人に支払われた給与の総額333億ドル(※2)を加えた1422億ドル(15兆3413億円)がゲーミング産業の直接的な経済効果と定義されている。

これに、カジノ施設の調達先や外注先事業者への支払い、それら事業者の雇用者に支払われた賃金など間接的な経済効果及びこれによって誘発された経済効果も含めると、総売上は2614億ドル雇用者180万人に支払われた給与総額は739億ドル。そして、これらゲーミング産業から直接的、間接的にもたらされた納税額は408億ドル(※3)だった。これらを合算した経済効果は3761億ドル(40兆5759億円)ということになる。 

経済効果の範囲を広げすぎている感もあるので、数字をカジノ施設運営事業者に絞り込んでみると、前述の通り売上894億ドル、雇用者数55万9千人。この雇用者数は、アメリカのレジャー・ホスピタリティ産業の30人に1人に相当し、航空産業(49・3万人)、バー・ナイトクラブ産業(39・4万人)をはるかに上回る。そして雇用者に支払われた給与総額は265億ドル(2兆8596億円)。世界金融危機で一時的に落ち込んだものの、2012年にはそれ以前の水準に回復し、2017年まで増加傾向が続いている。

パチンコホール産業の市場規模である業界総粗利の最新の推計値は3・38兆円(2018年、DK‐SISの推計)。カジノ施設の「ゲーミング売上」は729億ドル(約7兆8741億円)でホール業界の2・33倍。日本のGDPはアメリカの4分の1しかないことを考えると、パチンコホール産業の規模がいかに大きいかがわかる。

ゲーミング売上に対して課された「ゲーミング税」は106億ドル(約1兆1442億円)。アメリカのゲーミング産業を代表するネバダ州は「法人税がない」と言われるが、これは州税がないという意味であり、カジノ事業者は連邦税の法人所得税も固定資産税も課せられている。カジノ・ゲーミング産業は非常に多くの雇用、納税を生み出しそれを示すことで市民権を得て発展してきた。負の影響を低減するためのレスポンシブルゲーミング政策には年間3億ドル(約323億円)が拠出されている。

遊技業界の関係者なら、パチンコホール運営には非常に大きなコストがかかっているのを知っているが、そういった事情を知らない世間の人々からは、「遊技業界にはゲーミング税がない」「業界として納税総額の統計がない」「社会貢献拠出が年間17億円というのは産業規模に比べて小さいのではないか」と見えるかもしれない。

※1 コマーシャルカジノとトライバルカジノの合計で、ノンゲーミングを含む。競馬などのパリミューチュアル・ゲーミング、バーなどカジノ施設外に設置されたスロットマシン、ビデオ・ロッテリー、クジや慈善ゲーミングを含まない。
※2 従業員が賃金を得ることで誘発される消費は間接的経済効果と考えることができる。
※3 このうちゲーミング税が107億ドル。 
[出所]
Economic Impact of the US Gaming Industry

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