2018年7月25日水曜日

マスコミによる印象操作 ~もはや攻撃もしくは誤報では?

危機感を煽りたいがために不正確な情報を並べ立てるのはいかがなものか?

某新聞に載っていたギャンブリング障害の人の回復支援に取り組んでいるソーシャルワーカーの方の取材記事(もしかしたら本人執筆か)、未だに「日本にはギャンブル依存の疑いがある人は536万人」なんて数字を挙げている。
本当にその分野の専門家なら厚労省の最新調査に目を通して、知識をアップデートすべきと思うのですが。

70万人ですよ!

消費者金融で手軽にお金を借りられるって言ってるけど...、それ、いつの時代? 総量規制で年収の1/3に制限され、ロードサイドから無人契約機やキャッシュディスペンサーがどんどん消えていったのは、もう8年も前の2010年のことです。手軽に借りられる状況とは言い難いと思います。

総じて印象だけで語ってるような気がしてなりません。

ギャンブリング障害は高学歴者が多い?


ギャンブル依存症通院患者に占める学歴が大卒以上の人の割合が42%であることを挙げて、「高学歴に傾いている」とか」「競争社会の歪み」という珍説を展開してます。

男女あわせた4年制大学への進学率は1975年に27%くらいでしたが、男性に限れば40%を超えていました。現在、61歳くらいの方々です。1999年には男女合わせた4年制大学への進学率が40%(男性に限れば47%くらい)。現在の30代後半の方々です。
全員が卒業したわけではないでしょうが、世の中には大卒者というのはこのくらいいるのです。

つまり、ギャンブル依存症通院患者に占める大卒者の割合が42%というのは、「世の中の大卒者の構成比とほとんど同じ」ということ。ここから言えるのは、最終学歴とギャンブル依存はおそらく関係ないだろとうということ。
なんでこんなこともわからないのに専門家のような顔をして、「xxxxは危険」みたいなことが言えるのだろうか? 記者もおかしいと思わないのだろうか?

ソーシャルワーカーであるなら、本業である、目の前の患者さんの支援に集中していればよいと思う。知見のないことにまで口を出したり、不正確な情報を拡散したりするのは慎んだほうがよいのではないか。
それ以上に、このような不正確な情報に基づいて患者さん支援の施策を考えたりしてるソーシャルワーカーがたくさんいるのではないか?ということが心配です。不正確な情報、不適切な解釈に基づいて支援していては、患者のためにならないのではないかと心配です。


新聞社の記者・編集者にも大きな責任があって、取材相手がしゃべったことをただ文字起こしするならソフトウェアにできるただの「作業」。メディアの専門職なら、「私が調べた数値とは違う」とか「それは統計的に『関連がない』ことを意味しているのではないか」と指摘するか、厚労省の調査の結果を書き添えるとかしていただきたい。

もしかしたら新聞社側に、<危機感を煽る>という目的が最初にあって、それに都合のいいコメントをかき集めているのかもしれません。取材を受けたご当人も、「こんなこと言ってない!」とか「そういう文脈で言ったのではない!」と当惑しているかもしれません。いずれにせよ、恐ろしいことです。


2018年7月24日火曜日

パチンコ・パチスロ市場とギャンブル市場の比較

先週木曜日(7月19日)、公益財団法人 日本生産性本部が『レジャー白書2018』の概要を発表しました。

余暇市場をさまざまなカテゴリーに分け、参加者率やそこからの参加人口推計、各種産業データをもとにした市場規模(総売上)の推計などをまとめています。

2017年の余暇市場全体は69兆9310円で、前年比0.2%増加。

パチンコ・パチスロの市場規模(総売上高)は19兆5400億円で、同4.3%減。

余暇市場全体に占めるパチンコ・パチスロ市場の割合が非常に大きく、これがマイナスだと全体に大きく影響します。パチンコ・パチスロ市場を除いた余暇市場の市場規模はどうかというと、前年比2.1%増で、5年連続して前年を上回っています。

『レジャー白書2018』では、中央競馬、地方競馬、競輪、ボートレース、オートレース、宝くじ、スポーツ振興くじを、「娯楽部門」の「ギャンブル」というカテゴリーにくくっています。※パチンコ・パチスロは、「娯楽部門」の「ゲーム」というカテゴリーです。

この「ギャンブル」とパチンコ・パチスロの市場規模の推移を比較してみました。図は2007年を起点とした推移です。実は、ギャンブル市場は東日本大震災のあった2011年以降、回復基調が続いているんです。これは別に震災の影響ではなく、インターネット投票の普及(公営ギャンブルのオンラインレジャー化)と景気回復が大きな要因だと思います。


取り急ぎ。
たぶん、近日、続きを書きます。

田中剛/アミューズメントジャパン編集部
Tsuyoshi Tanaka/Amusement Japan

2018年7月20日金曜日

こういうのをマスコミの印象操作というのだろう

これは酷い! 本日(2018-07-20)の朝日新聞、IR整備法の成立を見越してギャンブル依存の特集記事。しかし、危機感を煽るために不正確な引用。
日本にギャンブル依存症患者が多いかのようなグラフをばーんと!


日本人成人の3.6%がいまギャンブル依存症が疑われているかのようなグラフ。

しかしですね、この3.6%という数値は、「生涯のある時点でギャンブリング障害の疑いがある状態になったことのある人」の割合です。生涯の有症率。いま現在のことではありません。「生涯で~」という調べ方をすると高齢化した国ほど数値は大きくなります。

現状を調べるには、「過去1年間に~」で調べた値を使うべきです。17年の厚労省調査によると、「過去1年間にギャンブリング障害の疑いがある状態になったことのある人」は0.8%でした。これはアメリカの半数以下、イギリスと同程度です。決して日本が多いわけではありません。

それよりも、着目していただきたいのは生涯の有症率3.6%と過去1年間の有症率0.8%の差です。この2.6%ポイントの人々はどうなったか?
日本の成人は約9000万人なので、約320万人が「生涯のある時点でギャンブリング障害の疑いがある状態になったことのある人」です。そして「直近1年間ででギャンブリング障害の疑いがある状態になったことのある人」は約70万人ということです。この差の250万人はどうなったのか?

治ったわけです。
少なくとも、過去1年間は「ギャンブリング障害の疑いがある状態」にないのです。


ギャンブルへの過度ののめり込み(ギャンブリング障害)が不治の病であるかのような症例(当事者)や医師、回復支援関係者のコメントばかりをかき集めて不安を煽るのは、ちょっと「嘘」に近い行為のように思えます。

ギャンブルの新たな種目を解禁することに反対する人もいるでしょうが、「ギャンブル依存症が〜」と本気で心配するなら、実態を伝えつつ、本当に必要な支援・有効な支援がどういうものかということを伝えていただきたいものです。

2018年7月9日月曜日

#マカオにおけるカジノの広告宣伝規制

マカオのゲーミングを規制する法律(広告宣伝規制)では下記のように定められてます。
カジノ運営者は、あらゆる広告活動において、カジノゲームを本質的なテーマとして扱ってはいけない。

Under Article7, Law No. 7/89/M (Advertising Activities),
gaming operators cannot use the games of chance as an essential subject of any advertising activities, including shuttle bus advertising, outdoor large display panels, electronic screen advertising, and other promotional items.

※「games of chance」とは、ここではカジノで採用されているテーブルゲーム及びゲーミングマシンを指します。

そういうわけで、カジノ運営者は直接的にせよ間接的にせよ、カジノゲームへの参加を誘うような広告を行うことができません。

もし、日本版IR議論の中で、「マカオなみの広告宣伝規制を当てはめよう」となったら、「既存の公営ギャンブルやギャンブル的なレジャーの広告宣伝は今のままでいいのか?」ということも議題にあがることでしょう。

2018年7月8日日曜日

#カジノ統合型リゾートを学術的見地から研究する人材の育成は誰が?

マカオのカジノ産業は長きにわたり1社独占の状態にありました。その営業権に期限切れを機に、マカオ政府は公開入札による市場開放に踏み切りました。
これによって2002年にラスベガスに拠点を置くカジノオペレーターを含む6社に新たにカジノ営業ライセンスが付与されました。
マカオとしても中国政府としても、これを機に制度を整備し管理しつつ、産業として育成しようという意図です。

このとき、多くの若き研究者を海外に留学させました。
そしてマカオ唯一の公立大学であるマカオ大学(University of Macau)は2003年にゲーミング学位課程を新設し、ラスベガスやカナダなどに派遣され学術的な見地からゲーミング産業を研究していた教授陣が帰国し教鞭をとりました。また、これと同時にマカオ政府は同大学内に公立のカジノ研究所Institute for the Studies of Commercial Gaming(略称ISCG、中国語では博彩研究所)を設立しました。
マカオ大学と公立ISCGにより、高度人材育成と基礎研究の態勢ができ、それに基づく政策提言がなされるようになったのです。



UNIVERSITY OF MACAU began its Gaming curriculum course in 2003, before that, there hasn’t been any of such educational program. Macau Special Administrative Region Government, in conjunction with the liberalization of casino industry to global operators, set up such academic and educational program dedicated to gaming, and a research center called the Institute for the Studies of Commercial Gaming (ISCG). These two bodies collaborated and became the locomotive of academic and research foundation of gaming industry on which Government relied for its public policy and implementation into its society.


さて、日本ではどういう公的な機関が、人材の育成、産業研究を担うようになるのでしょうか?


2月にマカオ大学の工商管理学院(日本風に言うと経営学部)を訪問しましたが、ここにはゲーミング部門の管理職向けの授業が行われる(学生の中にはIRオペレータ企業で働いている社会人も少なくない)ラボ、模擬カジノルームがあります。
ディーラー養成の授業ではなく、ディーラーを「管理」する人材を養成する教室で、模擬サベーランスルームもあります。