2016年7月12日火曜日

#白衣の天使は統計家

フローレンス・ナイチンゲール、ご存知ですよね? マザー・テレサと並ぶ女性偉人で、子ども向けの偉人伝シリーズには大抵、選出されていると思います。

自ら志願し看護団を率いて、クリミア戦争の戦線に赴き、負傷兵たちを献身的に介抱し看取りました。たしか34歳くらいだったと思います。当時、病院のディレクター職にありましたから、「率いて」という形なんです。写真からも伝わってくるように、ものすごく意志が強い人だったようです。

子ども向けの偉人伝にどう書かれているか、実は知らない(忘れている)のですが、この当時のイギリスでは看護職はかなり地位が低く見られていたのです。ですから社交界デビューも果たした良家の出身である彼女は、看護の道に進むことを親からものすごく反対され、周囲からは「お金持ちのお家の不思議ちゃん」扱いだったことでしょう。

まあ、たしかに不思議ちゃんかもしれません。

ご存知の方は少ないと思いますが、現在、ナイチンゲールは統計学者と見られています。
イギリスでは「統計学の先駆者」と評されていて、後年にはアメリカの統計学会の名誉会員にも選ばれています。

戦地の後方基地の病院で傷病兵の看護をしながら、戦死の本当の原因に気づきます。「衛生状態」ですね。

彼女たちのチームは戦地の病院の膨大な報告書の分析に取り掛かり、仮説の裏付けを行いました。

彼女のすごいところは、「こうすれば死亡率を下げられる」という衛生状態向上の提言をするために、データの分析結果を、専門家でないヴィクトリア女王でも理解できるよう視覚化したことです。

まだ棒グラフも円グラフもない時代に、独自のグラフを考案したんです。時計のように円形に時間軸をとった、円グラフと積み上げ棒グラフが混ざったような不思議なグラフです。
すごいことを考えついたものだと思います。


2016年7月10日日曜日

#考えるための道具=考具

アイデアを生み出すための要素の組み合わせ方の基本パターンというものがあります。

転用したら?……現在のままでの新しい使い道は?
応用したら?……似たものはないか? 真似はできないか?
変更したら?……意味、色、動きや臭い、形を変えたらどうなる?
拡大したら?……大きくする、長くする、頻度を増やす、時間を延ばすとどうなる?
縮小したら?……小さくする、短くする、軽くする、圧縮する、短時間にするとどうなる?
代用したら?……代わりになる人や物は? 材料、場所などを変えられないか?
置き換えしたら?……入れ替えたら? 順番を変えたらどうなる?
逆転したら?……逆さまにしたら? 上下左右・役割を反対にしたら?
結合したら?……合体、混ぜる、合わせたらどうなる?

「基本」と言いながら、こんなにありますけど、これは全て既存のもの・知識をベースにしてるんです。

自分の感覚では、日頃の仕事は「転用」「応用」「結合(組合せ)」が多くを占めているように思います。

ボクら人間て、「すでに知ってること」を足がかりにして何かを考えだすんですよね。実は、それしか方法がないんです。
だから、「すでに知ってること」があまりに少ないと不利なんです。

知らないことは思い出せない。だから、知識は増やしていく方が有利。こう書くと「知識偏重」と誤解されるかしれないけど、用語集を暗記したりするといつ意味ではないんです。自分にとって新しいことに接していれば、知識は増える。暗記しなくても、頭の片隅に残る。頭の片隅に残っていれば、記憶をたどることもできる。

知ってるけどなかなか思い出せないこともありますね。頭の奥底にしまわれっぱなし。これは時々、アクセスしてあげると、次には思い出しやすくなります。昔読んだ本を読み直すとか、同じ分野の講演を聴きに行くとか。ピンポイントで思い出せなくても、関連する言葉を覚えていれば、自分の頭の中を検索しやすいですから。

昔どんなに短期集中で何かの知識を溜め込んでも、この後、インプットをやめたり、その記憶にアクセスすることをやめてしまえば、アウト! 
どんどん忘れていく。きれいさっぱり忘れる。その知識は「思い出せないもの」になって使い物にならなくなるんですよね。

ですからボクは部下に「新聞くらいは読んだ方がいいよ」「本は読んだ方がいいよ」と強く勧めています。

『考具』の著者、加藤昌治氏(博報堂)は、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と言い切ってます。※ジャック・フォスターが『アイデアのヒント』の中で提示した考え。

『考具』では、アイデアのネタ素になる情報の取り入れ方、アイデアの広げ方、アイデアを企画に収束させる考え方などが紹介されています。こうした実践的な方法の数々を"考具"と呼んでいます。

考具、備えておきたいですね。そして、日々使う。

[関連エントリー]
#アイデアは「既存の要素の新しい組み合わせ」で生まれる
ナムコの池澤守氏(エンターテインメントクリエイト部)は月刊AJの連載コラムの中で何度かアイデア発想法について触れています。そこでは大抵、「組み合わせ」について語っていて、次の一文に集約できます。<人間の考えるすべてのアイデアは、何もないところ・・・

#ひらめきはロジックから生まれる

本書『ブレイクスルー ひらめきはロジックから生まれる』(著=木村健太郎、磯部光毅)では、「街の思考」「森の思考」という独自の言葉によって、2種類の課題解決アプローチ(頭の働き)を説明しています。【街の思考】意識上で解決しようという頭の働き。論・・・

2016年7月9日土曜日

#目からウロコのキャリアカウンセリング。

知識のメンテナンスのため、クランボルツ教授のキャリアカウンセリング理論を学びに行ったのですが、本人のカウンセリング映像はかなり衝撃的でした。

ロジャーズ派をベースにする、傾聴、感情に寄り添う、というカウンセリングとはまったく違うアプローチでした。感情よりも行動にフォーカスしています。そして、かなり、「教える」というスタンス(これはロジャーズ派からは"指示的だ"と批判されるかも)の場面が見られます。

正直なところ、「これは他流派だ」と思いました。

しかしながら、この方が自然なやりとりのように思ったのです、自分は。

キャリアについての相談者が「私は○○○を目指していますが、本当に○○○に向いているんでしょうか?」と言ったら、ロジャーズ派のカウンセラーなら、「本当に、○○○という仕事に向いているのか、不安に感じてるんですね?」と言うでしょう。間違いなく。

でも、クランボルツ教授はこう返しました。

「なってみないとわからないと思いますよ」

これは、キャリアカウンセリングを学んだ人にとってはかなり衝撃的で、吹き出すか唖然とするかなんです。

能力や興味を伸ばす、アクションを起こす力を与える、というスタンスなんです。



“受容・共感・自己一致だけでは問題は解決できない、学習(※)することの援助が必要”、という考えにも納得感があります。※心理学でいう「学習」とは、勉強という意味よりはるかに幅広く、経験を通して身につけたものすべてを指す。





いいな~、クランボルツ先生。


2016年7月8日金曜日

#偶然の囁きに耳を貸す

"今一度、人生を振り返ると、自分が望んで入れた学校はハーバードMBAだけで、他は幼稚園以来、第一志望校に入れたことは一度もなかった。"
"まあ実に希望通りにならない生き方だと思う。ただ後悔はまったくない。"

ボストンコンサルティンググループ日本代表を退任された御立尚資さんのインタビュー記事が、人のキャリアを考える上で非常に面白い。
自身のキャリアを振り返る中で何度も出てくるのが「偶然」「運」という言葉。

"こうなれば良いな、と目標は持つものの、人生には予想していなかった流れが来るのが普通。その流れをつかみ、流れにのっていくためには、先のことをがちがちに予定したりはしない。"
"自分らしく成長していくためには、偶然の囁きに耳を貸さないといけない。"

居心地の悪さを感じていた職場を辞めて、コンサルタントに転じたところ、その仕事が合っていた。御立さんは、就職活動を始めた学生時代には、考えもしなかったキャリアを歩んだことだろう。

このインタビュー記事を読んで思い起こしたのは、スタンフォード大、ジョン.D.クランボルツ教授の「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」

「キャリア意思決定における社会的学習理論アプローチ」を研究していたクランボルツ教授はこれを発展させ、1999年に「個人のキャリアは、偶然に起こる予期せぬ出来事によって決定されている事実がある。でもね、その偶発的な出来事を、主体性や努力によって最大限に活用し、力に変えることができるんだよ」と、予期せぬ出来事を学習の機会と捉えることを提唱しました。

御立さんは、これを地でやってきたように思いました。


興味のある方は、ぜひダイヤモンドオンラインの記事をご覧ください。

2016年7月5日火曜日

#時間記録の重要性

ドラッカーは著書『経営者の条件』の中に、「汝の時間を知れ」と題した1章を設け、時間管理の重要性を説いています。
その中で、時間管理の前提として「時間の記録」をすることを強く勧めています。

記録しないと、わからないんですよね。
記憶というのは、本当に曖昧なんです。

以前、あまりに仕事がはかどってない同僚に、「朝からこんなに遅くまで、昼休憩を除いて11時間くらいやってるけどさ、何の仕事に時間を費やしてるの?」と尋ねました。
彼は、「まず、○○○。それと〇○○...」と挙げ始めたので、自分は「所要時間も教えてよ」と注文を付けました。すると、5つくらい挙げたところで、「あとは...、なんだかちょこちょこと...」と言葉につまりました。

自分は教えてあげました。「いま挙げた作業の所要時間を足しあげても3時間程度だよ」と。
「コーヒー飲んだりタバコ吸ったりで1時間休んだとしても、あと7時間は何? その7時間もの使途不明時間は何なの?(笑)」

彼は、「う~ん」としばらく唸っていたものの、結局、「わかりません」と。

「キミが〇○○の作業を『だいたい30分』って言ったのが、たぶん1時間以上かかってるんだよ。ひとつひとつが3倍か4倍くらいの時間がかかってるんだよ。そうとしか思えないだろ」

時間の感覚なんて曖昧なもの。でも、実際に計測しているうちに、だんだんとどれだけの時間を要したかの感覚は身につくし、「この作業はこのくらいの時間を要するだろう」という見積もり精度も上がります、間違いなく。 
写真著作者 stockmedia.cc / stockarch.com 写真原題 Man holding a stopwatch-8169