2015年10月4日日曜日

#キャリアコンサルタントが国家資格になる。2016年4月から

来年4月にキャリアコンサルタントという国家資格が新設されます。

ポイントは以下の3点。
1.「キャリアコンサルタント」は名称独占資格になります。
2.5年ごとに更新される登録型の免許制になります
3.2016年3月末までに標準レベルキャリア・コンサルタントの試験に合格している人は、キャリアコンサルタント国家試験の合格者として取り扱われます。


それぞれ何を意味するのか、考えてみました。

まず、(1)ですが、業務独占資格ではないので、資格がなくてもキャリアコンサルティング/キャリアアドバイザー/キャリアカウンセラー等の仕事をすることはできます。しかし、「名称独占資格」ですので、「キャリアコンサルタント」を名乗れるのは当該国家資格の保有者のみとなります。

名称独占資格は、類似するまぎらわしい名称の使用を禁じています。キャリアアドバイザー、キャリアカウンセラー、キャリアコーディネーター、キャリアプランナーなどが、「紛らわしい名称」とみなされるのかどうか、現時点ではわかりません。もしも、これらが「類似するから使ってはならない」とされると、人材紹介会社などは大きな痛手となるでしょう。どこまでが「紛らわしい名称」となるか、これは注目したいところです。

次に(2)ですが、一定の継続学習が課せられることになるでしょうから、多少はコンサルタントの「品質維持」の効果が見込めるでしょう。一方で、「キャリアコンサルタント」を名乗りつづけるには維持費用がかかることになります。

(3)は、すでにこの資格のホルダーの方には朗報です。それよりなにより、現在、厚生労働省からキャリア・コンサルタント能力評価試験として指定されている試験を実施している10機関にとっても朗報です。きっと受検者が増えるでしょうから、資格ビジネスにとってはこれ以上ない追い風です。しかし、「国家資格を取ってしまえば民間団体の資格は不要」と考える人も出てくるでしょう。そうなると、既存の民間団体は会費や更新手数料といった収入源を失うので、死活問題です。
各団体は、国家資格保有者となったキャリアコンサルタントたちに、「民間の団体(自分の出身団体)の資格も継続する」と思ってもらえる、価値を感じてもらえるような施策を打ち出してくるでしょう。


さて、キャリアコンサルタント系の職業はすでにあるのに、なぜ、わざわざ国家資格を新設し名称独占資格としたのか?
ひとことでいえば、キャリアコンサルタントの活用を促進するためです。

民間資格である「標準レベルキャリア・コンサルタント」の保有者は全国に39,851人(平成26年3月現在:キャリア・コンサルティング協議会調べ)います。この資格を保有していなくても、キャリアコンサルタントとして活躍している方が大勢います。〔参考〕http://new.career-cc.org/library/download/hyoujun20140331.pdf
一方で、「標準レベルキャリア・コンサルタント」を保有していながら、キャリアコンサルタントの仕事をしていない、もしくは仕事に結びついていない方も大勢います。

このことを考えると、供給が足りないというよりも、(潜在的な需要はあるけれど)顕在的な需要が少ないのだと思います。
国としては、雇用の流動化、人材の再配置を進める中で、企業や労働者に、キャリアコンサルタントを活用してほしい。しかしながら、活用が進まない。
活用が進まない原因を、厚労省は、現状は玉石混合であまり信頼されてないからだと考えました。だから、キャリアコンサルタントの質を担保する必要があるだろうと、国家資格化しようということになったわけです。
これは原因の半分にすぎないと思います。もう半分の原因は、「キャリアについてカウンセリングを受ける」という選択肢があることを知らない、思いつかないということにあると思います。経営者も、従業員に「キャリアについてのカウンセリングを受けさせる」なんてことは思いつかないでしょう。要するに、存在がマイナー。

キャリアコンサルタントの国家資格化を盛り込んだ「勤労青少年福祉法等の一 部を改正する法律」が平成27年9月11日に成立し、9月18日に公布されたことを知っている人は少ないでしょう。検索しても大手メディアでこのニュースを見つけることはできません。
大国家プロジェクトである「マイナンバー制」ですら認知が全然進まないのですから、キャリアコンサルタントの知名度が一気に高まる可能性は低いように思います。とても残念なことだと思います。




【補足】以下は、背景をもっと知りたい方だけ読んでください。

平成26年度規制影響分析書(RIA)http://www.mhlw.go.jp/wp/seisaku/ria/26/ というページに、「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律案(青少年の雇用の促進等に関する法律)」に関連して、下記の9つの政策(主として規制)について、規制の内容・目的、効果、検討すべきこと等が報告されています。

○ 公共職業安定所における労働関係の法律の規定に違反する求人者からの求人不受理
○ 若者の職業の選択に資する情報の提供
○ 基準に適合する事業主の認定
○ 中小事業主団体が労働者の募集に従事する場合の職業安定法の特例
○ 報告の徴収並びに助言、指導及び勧告
○ キャリアコンサルタント試験の創設及び試験事務を担うための登録法人制度の創設
○ キャリアコンサルタントの登録制度の創設及び登録事務を担うための指定法人制度の創設
○ 有資格者に対する守秘義務等の義務付け
キャリアコンサルタントの名称独占化 http://www.mhlw.go.jp/wp/seisaku/ria/26/dl/ria26_270311_09_01.pdf

これを読むと、「キャリアコンサルタントの名称独占化」の背景について、次のように説明があります。
“現状においては、キャリアコンサルティングの専門性を有することを示す国家資格は存在していないことから、知識・技能に関わらず「キャリアコンサルタント」と称することが可能になっており、キャリアコンサルタントの資質等が担保されず信頼が高まらないためにキャリアコンサルタントの活用が進まず、労働者の適職選択や適切な職業能力開発機会の確保の観点から逸失利益が生じているものと考えられます。”

そして、規制の目的はこうです。
“労働者や事業主がキャリアコンサルタントを活用したい場合に、キャリアコンサルティングに関する専門的な知識・技能を有した者が明確でなければ社会的な混乱を招くおそれがあり、当該混乱を避けるために必要最小限度の規制として、キャリアコンサルタントでない者は、キャリアコンサルタント又はこれに紛らわしい名称を使用してはならないこととします。また、キャリアコンサルタントでない者がキャリアコンサルタント又はこれに紛らわしい名称を使用した場合には、罰則を適用します。”

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