2016年3月31日木曜日

#キャリア開発とは?


近年、働く一人ひとりが自分のキャリアを自律的に形成する必要性がますます高まっています。つまり、キャリア開発の必要性です。キャリア開発とは、「仕事を通してなりたい自分になろうとすること」です。

前回説明したように、「キャリア」という言葉には、単にどのような職につくのかということだけでなく、仕事や人生での役割や生き方のすべてを包括する概念が含まれています。

キャリア開発は、「キャリアディベロップメント」の和訳です。研究者は「キャリア発達」と訳す場合もあります。キャリアは本人の意識的な活動によって形成されるだけでなく、無意識のうちにあるいは二次的に意識されたものとして発達していくものでもあるからです。
そもそも「発達」は心理学の分野では、「人間が生まれ、その成長の過程において、心身の形態、構造、機能が質的、量的に変化すること」という意味で、青年期 を過ぎ中年期になっても、老年期になっても生涯続くものと捉えられています。必ずしも「成長」や「拡大」を意味せず、「変化」を指している点で、日常で使わ れる意味とは異なります。
以降、ディベロップメントの訳として、意識的な活動というニュアンスが強い「開発」という言葉を使いますが、ここには上記の「発達」に込められた意味も含んだものとしてご理解ください。


キャリア開発の必要性の高まりの背景には、まず、個人の労働観、人生観の多様化があります。ポストよりも家族との時間を大切にしたい、あるいはNPOなど社外の活動も重要視しているといった人が確実に増えています。
また、終身雇用制の崩壊という社会構造の変化により、「自分の職業人生は会社に任せておけば会社が決めてくれる」というわけにはいかなくなりました。
企業側の事情として、事業環境の変化が速く、予測不能な非連続なものになり、求められる専門性が多様かつ高度になったことも要因です。
こうした環境変化と専門性への対応には、組織主導の従来の「均質・集団型」人材育成システムは不向きです。どんな能力を高めればいいのか、そのためにどんな 教育をすればいいのか、という判断すら環境変化に追いつけません。しかし企業は、従業員の能力開発を諦めるわけにはいきません。「自ら考え行動する強い個 人の育成」に注力するのは自然な流れです。このような背景から企業は「自分のキャリアは自分で切り拓く(自己決定・自己責任)意識の醸成」に取り組み始めているのです。

キャ リアは、外的キャリアと内的キャリアに大別できます。外的キャリアとは、どういう会社でどういう部署に所属しているか。内的キャリアとは、自分にとって働 くこと、生きることの意味・意義・価値のこと。自分は何が得意なのか、何をしているときに充実しているのか、何を大事にしたいのかという、内的キャリアの 自覚が重要です。

企業によるキャリア開発支援は、内的キャリアの自覚の支援です。その目的は、個人のその人らしい成長を組織の成長に活かすことです。 当然のことですが、やろうという意志があって能力と適性がある人に任せるのが最も効率的、効果的です。本人自身がモティベーションを感じられるからです。

2012年、ソニーは過去最大となる5200億円の連結最終赤字になる見通しを発表しました。この年に設立されたのがEC人事部です。新たな事業への挑戦、事業の売却や撤退(出向や転籍)という環境変化に対応するため、ミドル〜シニア社員の活性化が急務と認識し、ECEmployee Career)の開発支援を行うために設けられました。ミッションは、<社員一人一人が環境変化に対応できる「自律的なキャリア開発」を支援する>です。
施策のひとつが、キャリア自立をサポートするための「キャリアメンター制度」で、現在26名のキャリアコンサルティング資格保有者がキャリアメンターを務めています。昨年12月の時点でキャリア研修受講者の78%が「非常に有益+有益」と回答し、48%が考え方や行動に明確に変化があったと回答しています。同社のキャリア開発支援は、社員の活性化の面で着実に成果を上げているようです。

2016年3月29日火曜日

#ギャンブル依存は「病気」という見立ての落とし穴

ワンデーポートで15年間にわたりギャンブルの問題を抱える人の家族相談を担当している、浦和まはろ相談室の高澤和彦代表(精神保健福祉士)は、ギャンブル依存の支援には、「支援者側の問題で、深刻なミスマッチが起きている」と言います。

多くの人が考える「ギャンブル依存症」とは、ギャンブル依存が原因となって生活が崩れたというもの。ギャンブルにのめり込んだせいでお金の使い方がおかしくなった、ギャンブルにのめり込んだせいで借金の問題が起きた、ギャンブルにのめり込んだせいで仕事ができなくなった等々。

しかし高澤代表が実際に家族相談で話を聴いてきた経験では、そういう人はほとんどいないのです。

どういう人が多いかというと、「昔からお金の使い方が下手な人や、お金を持ってしまうとギャンブルに限らず無計画にお金を使ってしまう人」だそうです。例えば、幼少の頃からお金の使い方が下手、貯金をしたことがない人。思い立った時に、日に何度もコンビニに行ってしまい、その度に余計なものまで買ってしまう人。辛いこと、苦しいことからの逃げ場としてギャンブルを使っているケースも多いそうです。

背景は様々ですが、相談を通じて、ギャンブルの問題を抱えている人を詳しく見ていくと、「その人の生活能力の特徴と生活が見合っておらず、バランスが崩れているときにギャンブルや借金の問題が起こってくることがとても多い」そうです。

本人の生活能力や適性と現状の生活が見合っていない人の場合、ギャンブルは生活がうまくいっていないことの「原因」ではなく「結果」なので、ギャンブルをやめても生活は安定しません。そのためワンデーポートは、ギャンブルや借金という表面の「結果」に目を奪われず、その背景を整理した支援に重きを置いているのです。

ギャンブルへの依存や借金という表面化している問題は、不適応の「結果」にすぎない。高澤代表はこのことを理解してほしいと訴えています。

「(ギャンブルを)病気、病気と言わないでください。本人は違うことで苦しんでギャンブルの問題が起きているのに、家族からはギャンブルの病気だと言われる──」

家族や支援者がギャンブルへののめり込みを病気だと捉えていることによって、このような、かみ合っていない状況が生まれているのです。

「ギャンブルの問題が起こると、家族は腹が立ったり、本人を責めたくなったりすると思いますが、少し冷静になって耳を傾けることが大事。そうすると、『実はこういうことで困っていて、結果としてギャンブルをしてしまったんだ』という流れが見えてくることがあります」(高澤代表)

問題の表面だけを見て「ギャンブル依存症」という見立てをして、ギャンブルやお金の問題に着目した支援の組み立てをしている限り、生活上の問題は形を変え繰り返し起こる可能性があるように思います。


【関連】
#ギャンブルへの過度の「のめり込み」は病気なのか?
認定NPO法人ワンデーポート(横浜市)は15年にわたり「ギャンブルに問題がある人」の支援活動を続けてきたNPOで、基本的に、最低3カ月間の入寮生活の中で、グループセラピーや個別相談を通じて個々の問題背景に即した支援を提供しています。実はワンデーポートは「ギャンブル依存症」という言葉を使いません・・・

2016年3月21日月曜日

#来店者調査におけるリピート意向率

日遊協が1月下旬に公表した、来店客アンケート(パチンコ・パチスロファンアンケート調査)の内容を、週刊アミューズメントジャパン(3/21号)で取り上げています。

この調査は日遊協、都遊協青年部、九遊連青年部が共同し、全国の加盟ホール店の協力を得て来店客を対象に実施したもの。今回は昨年10月中旬から11月上旬に実施し、ホール企業35社・136店舗内で2205人から回答を得ています。

来店客に様々なことを尋ねていますが、オペレーター企業含め多くの業界関係者にとって最も気になるのは「遊技継続意向」ではないでしょうか? 

回答者全体の58.5%が程度の差こそあれ遊技継続意向を示しています。これを十分な数と見るかどうか?

ちなみに、「どちらともいえない」と回答した人が29.0%で、継続したいと思っていない人が12.5%でした。詳しくは週刊AJの記事をご覧ください(さらに詳しく知りたい方は日遊協のレポートを)。

遊技継続意向を示したのは約6割。これは相当に厳しい数字だと思います。

店内調査は、インターネット調査や街頭調査と違い、回答者の中の<来店頻度=高>ユーザー比率が高くなります。※当然のことです。たまにしか来店しない人は来店客調査にでくわす可能性が低いのですから。実際、「週1回以上」の頻度で来店する人の割合を、同時期に行われた大規模なインターネット調査(市場調査会社のモニター会員を対象)と比較すると、約4倍です。

このような、<来店頻度=高>ユーザーの中で6割しか遊技継続意向を示していない状況を考えると、来店頻度が低いユーザーを含めた調査だったら遊技継続意向者率はもっと低くなるに違いありません。


仮にこの6割のファンが全員残り、「どちらともいえない」および「遊技継続意向なし」と回答した人のそれぞれ半数が離反したとしたら、2割減ってしまうわけです。※新たに参入する新規ファンや中断から復帰する再開ファンも、毎年一定数いますが、ごくわずかです。


今後、ファンに提供するもの(遊技機性能など)を変えていくのであれば、さらなるファンが離れが起こるのはしかたない。重要なことは、提供価値の軌道修正の方向が「ニーズがある」方向になっていること。

そこを間違えていなければ、新規ファンは増え、トライアル層の早期離脱は減り、ファン全体の減少幅を小さく抑えることも不可能ではないはずです。


#「キャリア」とは何か?

「キャリア」という言葉から何を連想しますか?

IT系の方だったら、carrier(通信事業者、運搬人、運送業)を思い浮かべるかもしれませんが、多くの方はcareerを思い浮かべると思います。
いずれも語源を中世ラテン語まで遡れば、馬車「carriage」の轍(わだち)だと言われています。

「運ぶもの(馬車)」かcarrierになり、「道筋(経歴)」がcareerになったようです。面白いですね。

しかし現代の日本では、多くの方にとってcareerはちょっと違う意味で使われているように思います。キャリアウーマン(死語?)、キャリア組など。つまり、「出世コース」という意味合いが強く含まれているように感じます。

しかしおそらく、人事の分野の方であれば、キャリアという言葉を「出世コース」とか「他者に誇れる輝かしい経歴」と捉える方は少ないでしょう。

文部科学省は次のように説明しています。
<人が、生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なりや積み重ね>
「道のり」の意味に近いですね。

アメリカではどうか。
アメリカ・カウンセリング学会(ACA)会長、全米キャリア・ディベロプメント協会(NCDA)会長などを務めたLee J. Richmond女史は次のように説明しています。
<careerは、『生涯にわたる職業選択に関わる活動・態度のこと』を意味する。もちろん、ここで言う職業選択は、『ライフスタイルの計画、自由時間(余暇)、学習、家族の活動』も含めて考える>
とても重要なことですが、仕事以外のことも含んでいるのです。
日本のキャリアカウンセリング協会(CCA)もほぼこの通りの捉え方をしています。
こういった「キャリア」という言葉の定義が、キャリア開発や人事に関わる人にとっての共通認識だと思います。

「キャリア教育」という言葉が初めて公文書に登場してからまだ20年もたっていません。教育現場で使われている「キャリア教育」という言葉は、当初は「進路指導」という意味が多分に含まれていたでしょうが、現在では上記のような意味で用いられています。
しかし、それ以前に学校教育を終え社会に出ている現在の中高年層で、人事分野の動向に疎いかたは、「キャリア」という言葉を異なる意味で捉えているかもしれません。
共通認識を持たずに「我が社の社員のキャリア開発は〜」という会話をしたしたら、コミュニケーションは平行線となってしまいますね。


[関連記事]
#キャリアコンサルタントという資格の現状
「キャリアコンサルタント」という資格について質問を頂いたので、少し調べてみました。質問のきっかけは、キャリアコンサルタントの国家資格化を盛り込んだ『勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律』が9月11日に成立し9月18日に公布された

#キャリアコンサルタントが国家資格になる。2016年4月から
来年4月にキャリアコンサルタントという国家資格が新設されます。ポイントは以下の3点。1.「キャリアコンサルタント」は名称独占資格になります。2.5年ごとに更新される登録型の免許制になります。 3.2016年3月末までに標準レベルキャリア・

#能力開発は労働者の自己責任
 職業能力開発促進法という法律があります。その一部が今年9月に改正されました。施行は来年(2016年)4月1日。まず、この法律の基本理念が改正されました。改正された理念はこうです。

2016年3月14日月曜日

#人をあるタイプに分類する (その3 共通因子を抽出した!)

<続き>
前回は、ライフスタイルやレジャーに対する志向、お金の使い方など20以上の質問の回答を分析し、そこから、複数の質問(=測定項目)の背後に隠れている、共通する<共通因子>を抽出するという話でした。

質問項目は以下です。

==質問項目==
  • 平凡に暮らすより何か変わったことがしたい
  • 運の要素を楽しむレジャー(余暇活動)が好き
  • 勝ち負け、点数がはっきりしたレジャー(余暇活動)が好きだ
  • みんなでわいわい騒ぐことが好きだ
  • 別の人格を演じたり、物語を楽しむレジャー(余暇活動)が好きだ
  • 身体を動かすレジャー(余暇活動)が好きだ
  • 好きなことに費やすお金は惜しまない
  • はまったらとことん突き詰めるタイプだ
  • モノを作ったり絵を描いたりする創作活動が好きだ
  • 自分は思い切りがよいと思う
  • 一人の時間を大切にしたい
  • 平穏やリラックスできるレジャー(余暇活動)が好きだ
  • 平穏な生活が一番だと思う
  • 個人で楽しむレジャー(余暇活動)が好きだ
  • 毎日が楽しければそれでよいと思う
  • 自分は人生を楽しんでいる
  • ストレスをためない自分なりの方法がある
  • 日常生活でストレスを感じることが多い
  • 時間に余裕がある方だ
  • 自分は倹約家だと思う
  • したいこと・買いたいものを決めて計画的にお金を貯めていくほうだ
  • 将来の計画を立てて準備をしている
  • ついつい予定よりも多くお金を使ってしまうことがある
========

上記の質問の測定値から、
・少数の
・直接には観測することができないが
・複数の項目の背後に潜む共通の因子

を抽出しました。


それが以下です。


【第1の因子】は「平凡に暮らすより何か変わったことがしたい」と最も相関が強いものでした。この次に相関が強い項目は、「運の要素を楽しむレ ジャー(余暇活動)が好きだ」「勝ち負け、点数がはっきりしたレジャー(余暇活動)が好きだ」です。つまり、これらの志向の背後に潜む、共通する<何か> です。


【第2の因子】は「一人の時間を大切にしたい」と最も相関が強い。この次に相関が強い項目は、「平穏やリラックスできるレジャー(余暇活動)が好きだ」「平穏な生活が一番だと思う」「個人で楽しむレジャー(余暇活動)が好きだ」です。


【第3の因子】は「自分は人生を楽しんでいる」と最も相関が強い。この次に相関が強い項目は、「日常生活でストレスを感じることが多くない」「ストレスをためない自分なりの方法がある」です。


【第4の因子】は「自分は倹約家だと思う」と最も相関が強い。この次に相関が強い項目は、「したいこと・買いたいものを決めて計画的にお金を貯めていくほうだ」「将来の計画を立てて準備をしている」です。


この4つの因子を抽出できたことによって、23の質問項目個々の結果でなく、各因子のスコアによって回答者を説明することができるのです。

分析がぐっと容易になります。

つまり、4つのモノサシで回答者をハカって、その値によって<似ている人>のグループを作っていけばいいのです。


<似ている人>のグループをどうやって作るのか、ということについては、またいずれ。

=== Research & Solutions!===

【前回】
#人をあるタイプに分類する(その2)共通因子を抽出する

【前々回】
#人をあるタイプに分類する(その1)共通因子とは何か?

#人をあるタイプに分類する(その2 共通因子を抽出する)

<続き>

分類するための第一歩は、どういう視点でハカるのかを見つける、決めること。
しかも、なるべく少ない視点でハカりたい。そうでないと大変ですから。


今回のテーマは、複数の測定項目の背後に共通する<共通因子>を抽出するという話です。

誰もがイメージしやすいのは、生徒の学力を「理系能力」と「文系能力」という2つの軸(因子)で説明するという方法でしょう。


主要な科目の学力を、「理系能力」「文系能力」という視点(因子とか軸とか呼ぶ)に集約することで、理系能力が高い・低い、文系能力が高い・低いで4分類することができ、生徒の学力の説明が容易になるんです。


もし理系・文系という概念を持っていなかったらどうなるか。
仮に、実施された試験が英語、数学、現代文、物理、地理、公民の6科目だった場合。各科目の得意・不得意のみで生徒を能力を見ようとすると、視点が6つもあります。「英語の得意・不得意という視点からは....、数学の得意・不得意という視点からは...」を繰り返していくほかはなく、個別の科目のことはわかっても、生徒の学力の概要を理解することは非常に難しい。

消費者の理解も同様です。「ブランドイメージ」「レジャーの志向」「日ごろの買物行動の志向」「職業の志向」などを知るためにアンケートで様々な質問をしても、質問項目(測定項目)が多くなればなるほど、そのままでは処理できません。

ボクは昨年暮れに実施した約4700人を対象に行ったアンケートの中に、ライフスタイルやレジャーに対する志向、お金の使い方など様々な質問を盛り込みました(26問)。その回答結果から、レジャーの志向・価値観・興味関心の違いによって、生活者を分類しようと試みました。まずは、もっと少ない分析視点に集約する必要があります。

第一歩は、観測された個々の質問の結果(=変数)の背後にある、<直接には観測することができない潜在的な因子>を抽出して、分析の視点(軸)を減らした上で、回答者のことをどういうモノサシでハカり説明するかをを決めることです。これが[STEP1]です。

問題は、、どうやって、複数の測定項目の背後に共通する<ある何か>を見つけるのかということです。

また理系能力、文系能力で説明します。
各科目の試験の得点を分析すると、科目どうしの相関関係が見えてきます。さらに、それらの科目とは別に、直接は観測できない<何か>(=共通因子)が潜んでいると仮定します。その<何か>があるとすると、それぞれの科目の得点との相関はどのくらいかと算出します。※この時点ではまだ、「理系能力」とか「文系能力」という言葉はついていません。
見つかったこの<何か>がどの科目の得点と相関が強いかを見ます。
1つは、数学、物理の点数と相関が強いけれど、国語や公民の点数とはほとんど相関がない。
もう1つは、現代文や英語の点数と相関が強いけれど、数学や物理とはほとんど相関がない。
これが分かった後、数学や物理の学力の背後に潜む共通する何かを「理系能力」と名付け、後者を「文系能力」と名付けたのです。

ひょっとしたら、実際にはこれとは異なるプロセスだったかもしれません。
経験的に「理系能力」「文系能力」と呼べる能力が存在するという仮説があって、それを検証するために、「じゃあ、いろんな各科目のテスト結果を分析にかけてみよう」と検証したのかもしれません。
つまり、仮説を先に持ち、統計解析によってそれを検証することも可能なのです。



では、次回でいよいよ、「レジャーの志向」についての具体例に進みます。

<続く>
=== Research & Solutions!===

 【続編】
#人をあるタイプに分類する (その3) 共通因子を抽出した!
http://tanaka-tsuyoshi-dts.blogspot.jp/2016/03/blog-post_2.html

 【前編】
#人をあるタイプに分類する(その1) 共通因子とは何か?
http://tanaka-tsuyoshi-dts.blogspot.jp/2016/03/blog-post_10.html

2016年3月11日金曜日

#少子化が進行し教育産業は...

ビックサイトで開催されていたフランチャイズショーの会場で、教育産業のフランチャイジーの出展数の多さを不思議に思いました。去年も不思議に思っていました。

「すでに少子化が進んでいるのに、今さら教育事業に?」と。

教育産業の市場規模はすごい勢いで縮小してるはず。

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と、思い込んでいたんです。

2年続けて不思議に思ったので、いくつかのブースで話を聞きました。
そして、ネットで調べてみました。

矢野経済研究所は次のように状況を説明しています。

「少子化の進行によって当該市場の対象人口は減少を続けており、限られた顧客層を奪い合う形で、業績を伸長させる事業者とそれ以外の事業者において、明暗が分かれている」

そして、こう続けます。

「2015 年度も、参入事業者間の業績に両極が見られることが考えられ、これらが相殺される形となって、学習塾・予備校市場規模は横ばい基調になるものと予測する。」


そう、横ばいです。縮小ではないんです。

同社のレポートによると、学習塾・予備校の2015年度の市場規模予測は9,420億円で、2011年比で見ると1.9%増です。



さらに、ベネッセコーポレーションが作成した資料を見ると、上記の「学習塾・予備校市場」に「通信教育(未就学児向け/小学生から高校生向け)」「その他(幼児教育/学習参考書・問題集/家庭教師派遣)を加えた校外学習市場は、過去数年でほとんど変化がありません。

これは意外でした。

要因はいくつか考えられます。
1.親の教育熱の高まりで、教育費支出の優先度が高まった。
2.世帯の子どもの人数が減ったことで、1人にかけられる教育費も増えた。

両家のおじいちゃん・おばあちゃんからの援助が1人の子どもに集中する(=6ポケット)ということも起こっているはずです。

2013年から、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」がスタートしたことも影響しているのかもしれません。

この制度は、教育資金に充てるために直系尊属から贈与を受けた場合、1500万円までは贈与税の課税価格に算入されないというもの。

そもそも、孫の教育費を祖父母がその都度、直接支払うような場合は、原則として贈与税はかかりません。でも、この新制度によって、祖父母から孫に非課税でまとまったお金を贈与することができるのです。※非課税の限度額は受け取る側1人につき最大1500万円。贈る側1人につきではない。


もちろん、教育産業は好環境にある有望な産業だと言うつもりはありません。激しい競争が繰り広げられています。

学習塾を大別すると、集合型授業型と個別指導型に分けられ、シェアを拡大しているのは後者です。

今回のフランチャイズショーで目についたのは、「明光義塾」など2137教室を展開する明光ネットワークジャパン、「城南予備校」など300教室を展開する城南コベッツ、「Class Benesse」塾事業に本格参入を始める“最後発”のベネッセコーポレーション。偶然かもしれませんが、これらはいずれも個別指導塾です。

こうして見ると、横ばいの市場の中で、これから企業間の明暗が分かれていき、伸びる会社もあるのだろうなと思います。

個人的にはやはり、ベネッセが面白そうです。現在、わずか13教室。そして生徒の学習状態をリアルタイムで把握して、教室の指導員(先生)をサポートする最新のIT技術。

「これなら、さほど熟練した先生でなくても、一人一人の子どもに目が行き届くはず!」と感心しました。

#ギャンブルへの過度の「のめり込み」は病気なのか?

認定NPO法人ワンデーポート(横浜市)は15年にわたり「ギャンブルに問題がある人」の支援活動を続けてきたNPOで、基本的に、最低3カ月間の入寮生活の中で、グループセラピーや個別相談を通じて個々の問題背景に即した支援を提供しています。
施設長の中村努さん自身が、ギャンブルの問題から回復した経験を持っています。

注目していただきたいのは、ワンデーポートが「ギャンブル依存症」という言葉を使わない点。
これは、活動を通じて以下のような考えに至ったからだそうです。

  • ギャンブルにはまっていてもその背景は多様である。
  • ギャンブルをやる前から生活上の問題がある人は、表面上は“依存症のような状態”であったとしても、根本的には金銭管理や生活能力の問題(発達障害など)のケースが多々ある。
  • 依存という行動を病気と捉えることは、問題を抱えている人の利益になることは少ない。


問題の背景が多様なのに、「依存症専門と言われている病院やクリニックでは、生活能力に起因するギャンブラーも、病的なギャンブラーも十把一絡げ。ただGAや回復施設に行くことを提案される」という状態では、必要な支援が受けられません。

こういったことを知ってもらうために、「ギャンブル依存症」という言葉を使わないそうです。

■ワンデーポートについて関心のある方は下記のQ&A頁をご覧ください。
http://www5f.biglobe.ne.jp/~onedayport/blankpage5.html

2016年3月10日木曜日

#人をあるタイプに分類する

いろんな人がいます。
外向的で営業が好きな人もいれば、1人でコツコツとやる事務仕事が好きな人もいる。親切な人もいれば、意地悪な人もいる。

でも、「レジャーへの志向」と場面を絞ったら、人のタイプは、「十人十色」よりもさらに集約できるように思います。

例えば、ロジェ・カイヨワは遊びを4つに区分しました。有名な、アレア、アゴン、ミミクリ、イリンクスです。このなかのどのタイプの遊びを好むかによって、人を分類できそうです。
これら遊びはさらに、制約(自由⇔制限)や参加人数(1人で⇔大勢で)といった軸で区分できますので、遊びはもっと多くの区分が考えられます。
さらに人は、レジャーに関連するお金の使い方の態度(思い切りよく使う⇔計画的に使う)や流行からの影響度などの気質でも分類できるでしょう。分類するための軸は、他にももっと挙げられるでしょう。

すると、「どんどん細かくなっていくから、とてもじゃないが<タイプ分類>などできない」と思うかもしれませんが、そうでもないんです。

複数の項目の背後に共通する<何か>を抽出できる場合があるのです。

例えば、学校のたくさんの科目の中で、数学、物理、プログラミングのテストの得点に相関がみられたとします。これらの背後には「理系センス」と呼べるいう共通の感覚・スキルがあると考えられる。
この「理系センス」が数学、物理、プログラミングという科目に大きな影響を与えています。別の言い方をすると、数学、物理、プログラミングの得点の大部分は「理系センス」の程度で説明できる、ということ。

こういう、複数のことの測定値(=変数)の背後に共通する<何か>のことを、「共通因子」と呼びます。

レジャーへの志向に話を戻しますと、生活者にレジャーやライフスタイルについて20問、30問と質問を投げかけても、それらの中からいくつかの「共通因子」を抽出できれば、ぐっと少ない分析視点で回答者を分類することができます。
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 ・
<続く>

【続編】
#人をあるタイプに分類する(その2) 共通因子を抽出する
http://tanaka-tsuyoshi-dts.blogspot.jp/2016/03/blog-post_14.html

#人をあるタイプに分類する (その3) 共通因子を抽出した!

http://tanaka-tsuyoshi-dts.blogspot.jp/2016/03/blog-post_2.html


【少し関連する記事】
#勘に頼らずに科学的な根拠で決断を下す
少し前にダイヤモンドオンラインで「トヨタと日産、強さの秘密は社員の“ある特性”」という記事を見ました。これは非常に興味深い内容でした。ハーバードビジネススクールのフォレスト……

#接客で重要なのはスピード感!
あるパチンコホール企業の方から、相談が寄せられました。社内研修の一環で「接客の向上は必要か不要か」をテーマに、ディベート大会」が行われることになっていて、その方は肯定側(接客……

#何が再来店動機になっているのだろう?
自分たちが提供しているものの中で、「価値がある」と消費者が認めているのは何なのか? サービス提供者は意外と、この点を計測しないまま勘によって、「これがウケてる」と思い込んでる……

2016年3月4日金曜日

#こんな部下と働きたい

職場で上司として、何が悲しいと言って自分の思い込みだけで話す部下」と議論するほど悲しいことはありません。

K.I.T.虎ノ門大学院MBAプログラム主任教授の三谷宏治さんは著書にこう書いています。

こういう部下はたいてい自分の思い込みを、「みんなそうらしいですよ」「最近はこうなんです」と、いかにも世の人々の想いのように表現するから余計にややこしい。

一方、上司として何より楽しいということにも触れています。

それは、言われたこと以外のことも自分で考え、調べてぶつけてくる部下と議論することだそうです。

たしかに!

指示されたことをやってるだけではだめ。疑問を持つ、自分で考える、調べるって大事です。

2016年3月1日火曜日

#ストレスをためない自分なりの工夫

会社員の約6割が、仕事でストレスを感じていると言われます。
実際に当方が4700人以上の全国の生活者(18歳~79歳)への調査の中から、20歳~59歳の有職者(経営者・役員、会社員、自営業、公務員)を抽出して、「仕事でストレスを感じることが多い」との質問に対して「そう思う」(そう思う+ややそう思うの合算) と回答した人の割合を調べると、54.5%でした。

興味深いのは、<経営者・役員>はストレスと感じている人の割合が低いということ。

要因はいくつか考えられます。
ひとつは、メンタル的にタフだから、経営者・役員になったという可能性。
もうひとつは、仕事はキツいが、同時に“裁量”もあるため、ストレス反応のリスクは高くない。
最後に、ストレスをためない技術を身につけている。

2番目については、カラセック教授が提唱した「仕事の要求度・コントロールモデル」で説明できそうです。
3番目については、当方の調査項目中の「ストレスをためない自分なりの方法がある」に対して、<経営者・役員>は「そう思う」と回答した人の割合が高いことからもうかがえます。