ワンデーポートで15年間にわたりギャンブルの問題を抱える人の家族相談を担当している、浦和まはろ相談室の高澤和彦代表(精神保健福祉士)は、ギャンブル依存の支援には、「支援者側の問題で、深刻なミスマッチが起きている」と言います。
多くの人が考える「ギャンブル依存症」とは、ギャンブル依存が原因となって生活が崩れたというもの。ギャンブルにのめり込んだせいでお金の使い方がおかしくなった、ギャンブルにのめり込んだせいで借金の問題が起きた、ギャンブルにのめり込んだせいで仕事ができなくなった等々。
しかし高澤代表が実際に家族相談で話を聴いてきた経験では、そういう人はほとんどいないのです。
どういう人が多いかというと、「昔からお金の使い方が下手な人や、お金を持ってしまうとギャンブルに限らず無計画にお金を使ってしまう人」だそうです。例えば、幼少の頃からお金の使い方が下手、貯金をしたことがない人。思い立った時に、日に何度もコンビニに行ってしまい、その度に余計なものまで買ってしまう人。辛いこと、苦しいことからの逃げ場としてギャンブルを使っているケースも多いそうです。
背景は様々ですが、相談を通じて、ギャンブルの問題を抱えている人を詳しく見ていくと、「その人の生活能力の特徴と生活が見合っておらず、バランスが崩れているときにギャンブルや借金の問題が起こってくることがとても多い」そうです。
本人の生活能力や適性と現状の生活が見合っていない人の場合、ギャンブルは生活がうまくいっていないことの「原因」ではなく「結果」なので、ギャンブルをやめても生活は安定しません。そのためワンデーポートは、ギャンブルや借金という表面の「結果」に目を奪われず、その背景を整理した支援に重きを置いているのです。
ギャンブルへの依存や借金という表面化している問題は、不適応の「結果」にすぎない。高澤代表はこのことを理解してほしいと訴えています。
「(ギャンブルを)病気、病気と言わないでください。本人は違うことで苦しんでギャンブルの問題が起きているのに、家族からはギャンブルの病気だと言われる──」
家族や支援者がギャンブルへののめり込みを病気だと捉えていることによって、このような、かみ合っていない状況が生まれているのです。
「ギャンブルの問題が起こると、家族は腹が立ったり、本人を責めたくなったりすると思いますが、少し冷静になって耳を傾けることが大事。そうすると、『実はこういうことで困っていて、結果としてギャンブルをしてしまったんだ』という流れが見えてくることがあります」(高澤代表)
問題の表面だけを見て「ギャンブル依存症」という見立てをして、ギャンブルやお金の問題に着目した支援の組み立てをしている限り、生活上の問題は形を変え繰り返し起こる可能性があるように思います。
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認定NPO法人ワンデーポート(横浜市)は15年にわたり「ギャンブルに問題がある人」の支援活動を続けてきたNPOで、基本的に、最低3カ月間の入寮生活の中で、グループセラピーや個別相談を通じて個々の問題背景に即した支援を提供しています。実はワンデーポートは「ギャンブル依存症」という言葉を使いません・・・
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